『南海物語』 ジャック・ロンドン(春風社)

南海物語南海物語

書名:南海物語
著者:ジャック・ロンドン
訳者:深沢 広助
出版社:春風社
ページ数:300

おすすめ度:★★★★




ジャック・ロンドンの短編作品のうち、いわゆる「南海もの」を集めたのが本書『南海物語』である。
ロンドン自身の南太平洋での航海の体験が生かされているからか、精彩に富んだ描写が見られるのが特徴となっている。
「野蛮・未開な」原住民と「文明化された」白人たちとの対比が際立っている作品が多く、ある意味では南太平洋を舞台とした王道的な短編集と言えるように思う。

『南海物語』の収録作品は、『マプヒの家』、『鯨の歯』、『マウキ』、『ヤー!ヤー!ヤー!』、『異教徒』、『怖ろしいソロモン諸島』、『大胆不敵な白人』、『マッコイの子孫』の8編である。
原住民の野蛮な習俗と白人の非道な仕打ちを扱った作品が多く、全般に血の気に満ちた雰囲気が支配的であるが、その一方で、同じテーマを扱いながらも『怖ろしいソロモン諸島』のようにユーモアの感じられる作品もあり、この『怖ろしいソロモン諸島』などはだいぶ一般受けしそうな作品に思われる。

『南海物語』の収録作品にはしばしばテーマやモチーフの反復が見られるため、描かれている作品世界の幅はいくらか限定的と言えるかもしれない。
ただし、その反復が残虐性を帯びた事柄への言及であったりする場合、それだけ印象的になるのも事実だ。
たとえば、殺した相手の首を切り落として飾るとか、人肉を食するとかいったような描写は、それに何度も接している読者にとってなかなか忘れがたいものとなるだろう。

ジャック・ロンドンの短編作品の中では、「南海もの」はあまり脚光を浴びることのない部類に入るのではなかろうか。
しかし、それだからこそ『南海物語』の収録作品は他社から刊行されているロンドンの短編集との重複が少ないというメリットもある。
ジャック・ロンドンに興味のある方には一読をお勧めしたい一冊だ。
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