『だまされた女/すげかえられた首』 トーマス・マン(光文社古典新訳文庫)

だまされた女/すげかえられた首 (光文社古典新訳文庫)だまされた女/すげかえられた首 (光文社古典新訳文庫)

書名:だまされた女/すげかえられた首
著者:トーマス・マン
訳者:岸 美光
出版社:光文社
ページ数:333

おすすめ度:★★★★




トーマス・マン後期の中編作品を二つ収録しているのが本書『だまされた女/すげかえられた首』である。
どちらの作品にもしばしば抽象的な議論が差し挟まれてはいるが、難解さや重苦しさはそれほど感じられず、数年前に出版された新訳ということもあるからか、読みやすいと言っても過言ではないように思う。

『だまされた女』は、初老の域に達した未亡人ロザーリエが主人公である。
更年期を迎え、女として生きていくことを断念しなければならないのかとの思いから不安定な精神状態に陥っていたロザーリエだったが、息子の家庭教師であるアメリカ人の青年に好意を抱き始め・・・。
タイトルからしてややネタばれのようにも思えるが、誰が何にどうだまされるのか、最後まで楽しめる作品になっている。

「あるインドの伝説」という副題を持つ『すげかえられた首』は、インドの伝奇的な物語を元にして書かれた作品で、舞台がインドであるという点でマンの作品の中では異色の作品と言えるだろう。
精神的で端正なシュリーダマンと肉体的で粗野なナンダという対照的な二人は無二の親友であったが、シュリーダマンの妻を巡って関係がこじれ始めてしまい・・・。
解説でも触れられているように、作中の描写がインドの風習に反するのではないかと多少の疑問が残りはするのだが、それは些事と割り切るべきなのかもしれない。
また、『だまされた女』と同様、タイトルがネタばれであるように感じられるのは否めないものの、こちらも物語の展開が最後まで読者を飽きさせないに違いない。

本書に収録の二作品のうち、個人的には『だまされた女』の方が気に入っているが、『すげかえられた首』の方をより好まれる読者がいてもまったく不思議ではない。
そのぐらいに両作品ともに読者を納得させる仕上がりになっている。
容易に入手できる文庫版ということもあるので、マンに興味のある方はぜひ手にしていただければと思う。
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