『海の狼』 ジャック・ロンドン(シリーズ百年の物語 3)

海の狼 (シリーズ百年の物語 (3))海の狼 (シリーズ百年の物語 (3))

書名:海の狼
著者:ジャック・ロンドン
訳者:関 弘
出版社:トパーズプレス
ページ数:409

おすすめ度:★★★★★




荒野の呼び声』と肩を並べるジャック・ロンドンのベストセラー小説の一つが本書『海の狼』である。
荒野の呼び声』がアラスカを舞台にした作品であるのに対して、『海の狼』は海上に浮かぶ帆船を主な舞台としており、まったく違ったロンドンの魅力を味わうことのできる作品となっている。
一度読み始めるとすらすら読める作品で、たいていの読者は退屈を覚えることなく読み終えてしまっているに違いない。

『海の狼』の主人公は、文学評論家をしている青年ハンフリーである。
ある日のこと、乗船していた連絡船が沈没し、沖を漂流していたところを運良く通りがかりのオットセイ漁に向かう船に救助されたハンフリーだったが、その船は残忍な船長が絶対的な権力をもって支配するゴースト号だった。
ハンフリーの陸地に送り届けて欲しいとの要望は却下され、船で給仕として働かされることになり・・・。
読者の関心が主人公の境遇の変化からそれることはないだろうが、存在感では微塵も引けを取らない船長、「狼」とあだ名されるラーセン船長の描写こそ、『海の狼』の醍醐味であると感じられる読者も少なくないことだろう。

オットセイ漁の船か捕鯨船かの違いこそあれ、『海の狼』はメルヴィルの『白鯨』と多くの共通点を持っている。
後世に再発見されるまで等閑視されていた『白鯨』をロンドンが知っていたかどうかは定かではないが、少なくとも我々が両者を比べてみるのは面白い読み方となるはずだ。

帆船に関する専門用語の使用が多いために読者に伝わりにくい部分もあるにはあるが、本書は巻頭に略図が添えてあるので、それを参照すれば大半の疑問は解消されることだろう。
後半になってやや失速するような印象を受けなくもないが、『海の狼』は全般にきわめてロンドンらしい海洋冒険物語に仕上がっており、ロンドンに興味のある人にはもちろん、そうではない人にも強くお勧めしたい一冊だ。
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