『風俗研究』 バルザック(藤原書店)

風俗研究風俗研究

書名:風俗研究
著者:オノレ・ド・バルザック
訳者:山田 登世子
出版社:藤原書店
ページ数:227

おすすめ度:★★★★




バルザックが19世紀前半のフランスの風俗を論じた作品を集めたのが本書『風俗研究』である。
『優雅な生活論』、『歩き方の理論』、『近代興奮剤考』の三編から構成されており、一時代の風俗を看破するバルザックの鋭い観察眼と同時に、ユーモアセンスも見受けられるのが特徴となっている。
観点こそ限られてはいるが、バルザックの書いたどの小説よりも、バルザックの暮らした時代の雰囲気を垣間見ることのできる一冊だと思う。

そもそも優雅とはどのようなものなのかということから検討を開始する『優雅な生活論』や、脱線を重ねつつもバルザックらしい持論を展開する『歩き方の理論』は、決して優雅なスタイルではなく、歩き方も美しくなかったに違いない著者バルザックの姿を思い浮かべながら読むと、どこか微笑ましく感じられるのではなかろうか。
『近代興奮剤考』では嗜好品の数々、たとえばアルコールやコーヒー、タバコなどが論じられている。
これはブリア=サヴァランの『美味礼讃』の付録として扱われたという経緯があるため、『美味礼讃』を先に読んでおくといっそう楽しめる小論である。

本書に訳出されている『優雅な生活論』、『歩き方の理論』、『近代興奮剤考』の三編は、「人間喜劇」にそのタイトルを留める幻の大著である『社会生活の病理学』の一部を成している。
明確な構想を持ちながら結局完成されることのなかった『社会生活の病理学』だが、本書を『風俗研究』ではなく『社会生活の病理学』という書名で刊行してくれれば、「人間喜劇」を少しでも多く読みたい読者の助けになったように思うのは私だけだろうか。

本書の収録作品はいずれも少し堅苦しい表題を掲げてはいるものの、その内容はというとエッセイとして読むことのできる軽快なタッチで書かれている。
バルザックに、19世紀のパリに興味のある方は気軽に手にしていただければと思う。
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