『サンクチュアリ』 フォークナー(新潮文庫)

サンクチュアリ (新潮文庫)サンクチュアリ (新潮文庫)

書名:サンクチュアリ
著者:ウィリアム・フォークナー
訳者:加島 祥造
出版社:新潮社
ページ数:426

おすすめ度:★★★★★




フォークナーの名を世に知らしめた出世作がこの『サンクチュアリ』である。
手法の点では『響きと怒り』より直截的に書かれているので読みやすく、フォークナーの代表的な長編作品の中では文章量も手頃なので、フォークナーを知らない読者が『サンクチュアリ』から始めてみるというのも悪くないかもしれない。

『サンクチュアリ』は、酒を密造している一団の下へ若い男女が迷い込んだことが引き起こした事件の顛末を描いている。
暴力とそれに怯える心情や、善悪の交錯する場面などは、いかにもフォークナーらしい巧みさで書かれており、本書の読みどころの一つと言えるはずだ。
時間軸のぶれと場面の転換の多さが読者を混乱させかねないが、『サンクチュアリ』がスピーディーな作品に仕上がっていることは間違いないだろう。

『サンクチュアリ』は凄惨な事件を描いたものとして紹介されていることが多いが、実際に『サンクチュアリ』の読者が強いインパクトを受けるかというとそうでもない気がする。
単に今日の読者が当時の読者と比べてテレビや映画などを通じてグロテスクな出来事に慣れてしまっているからかもしれないが、肝心なところをオブラートで包みこむようなフォークナーの婉曲的な表現技法による部分も少なくないはずで、読者には行間を読みながらのあらすじの把握が求められる箇所もあることだろう。

一般的にはフォークナーの代表作の一つに数えられているにもかかわらず、『響きと怒り』や『八月の光』といった他の優れた長編作品との対比によるからなのか、『サンクチュアリ』の文学的評価はそれほど高くないらしい。
しかし、暴力的な作品を書く作家というフォークナーに欠かせない一面を知る上で『サンクチュアリ』は格好の素材であるため、フォークナーに関心のある読者には強くお勧めしたい作品だ。
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