『八月の光』 フォークナー(新潮文庫)

八月の光 (新潮文庫)八月の光 (新潮文庫)

書名:八月の光
著者:ウィリアム・フォークナー
訳者:加島 祥造
出版社:新潮社
ページ数:664

おすすめ度:★★★★★




フォークナーの代表作の一つである『八月の光』。
爽快感さえ覚えかねないタイトルの作品ではあるが、実際のところはアメリカ南部社会の負の面を描き出した濃厚な作品になっている。
サンクチュアリ』にも通じるところの多い作品で、テーマや手法の面から判断しても、フォークナーの作品群の中で重要度の高い作品といえるのではなかろうか。

自分には黒人の血が混じっていると信じ込み、反社会的な存在となっているジョー・クリスマス。
物語が進むにつれて彼の孤児としての生い立ちが徐々に詳らかにされ、半ばは必然的な結果として、クリスマスはその終着点である破滅へと辿り着くのであった。
中心人物のクリスマスを取り巻く人々のエピソードも読み応えがあり、総体として見た場合の『八月の光』に幅と奥行きを与えているように思われる。

『八月の光』に限ったことではないが、フォークナーの作品は後半部分に至るまでのざっくりとしたあらすじが作品紹介の部分に書かれていたりする。
要はネタばれなのであるが、それを読んだ上で作品を読み始めても、読み手を失望させないだけの緻密な心理描写が続いていたり、凝った技法が用いられていたりする。
これらの点こそ、フォークナーを嫌う読者からすれば彼の欠点と感じられるのだろうが、一度その筆致にはまれば癖になること疑いなしだろう。

クリスマスの引き起こした事件の顛末に関して、幕引きが少々あっけない気がしないでもないが、一つの小説としては物足りなさを感じることがほとんどない。
『八月の光』には『響きと怒り』のような読者を戸惑わせる難解さもないので、フォークナーに関心のある方はぜひ本書を手にしていただければと思う。
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