『フォークナー短編集』 フォークナー(新潮文庫)

フォークナー短編集 (新潮文庫)フォークナー短編集 (新潮文庫)

書名:フォークナー短編集
著者:ウィリアム・フォークナー
訳者:龍口 直太郎
出版社:新潮社
ページ数:353

おすすめ度:★★★★★




フォークナーの代表的な短編作品を集めたのが本書『フォークナー短編集』だ。
一般的には、フォークナーといえば難解な長編小説作家というイメージがあるように思うが、短編にはその難解さがなく、それでいてテーマや登場人物が長編作品に直結するものであるため、フォークナーに関心を持っている読者にとっては、長編作品を補完するもの、もしくは長編作品への格好の足掛かりとなるのではなかろうか。

『フォークナー短編集』には、『嫉妬』、『赤い葉』、『エミリーにバラを』、『あの夕陽』、『乾燥の九月』、『孫むすめ』、『バーベナの匂い』、『納屋は燃える』の八編が収録されている。
南部社会の負の面、すなわち奴隷制度とその名残りであったり、暴力が横行しているさまや没落した名家の悲惨さなどに焦点を当てているあたりはいかにもフォークナーらしいと言えるだろう。
すべてを描ききらない筆致も長編作品と同様で、フォークナーの筆の進め方に短編作品で慣れておくと、難解と評される彼の長編作品が読みやすくなるかもしれない。

それにしても、フォークナーの短編の中でも非常に有名な『エミリーにバラを』と『あの夕陽』は、やはりその知名度に劣ることのない素晴らしい出来栄えだと思う。
特に『響きと怒り』に結び付く『あの夕陽』は、フォークナーに関心のある読者がこの短編集の中で最も念入りに読むべきものになるのではなかろうか。

フォークナーの作品群を見渡した場合、個人的には長編作品のほうをお勧めしたいと思うが、コンプソン家、サートリス家、スノープス家といった長編作品の主要登場人物たちが描かれている短編作品も見過ごすわけにはいかない。
再版が続いている『フォークナー短編集』は入手もきわめて容易であるし、訳文の読みやすさや収録作品の質から言っても自信を持ってお勧めできる一冊だ。
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