『ジャーナリズム性悪説』 バルザック(ちくま文庫)

ジャーナリズム性悪説 (ちくま文庫)ジャーナリズム性悪説 (ちくま文庫)

書名:ジャーナリズム性悪説
著者:オノレ・ド・バルザック
訳者:鹿島 茂
出版社:筑摩書房
ページ数:332

おすすめ度:★★☆☆☆




バルザックのエッセイ風作品のひとつがこの『ジャーナリズム性悪説』である。
『ジャーナリズム性悪説』というタイトルではあるものの、そもそもそのタイトルが原題とかけ離れているし、論文調で書かれているわけではない。
最初から最後まで皮肉や揶揄に満ちた文章が連ねられており、気軽に読み進めることのできる作品と言えるだろう。

『ジャーナリズム性悪説』は、各々の仕事に応じて分類されたジャーナリストたちに対して、バルザックならではの辛口の批評が順になされていくという構成になっている。
自身ジャーナリズムに手を染めていたバルザックだからこそわかる部分も多いようで、意外と細かいところまで観察されているという印象を与えられるように思う。
実際にジャーナリズムに携わっている読者が本書をどのようにとらえるかは定かではないが、ジャーナリズムに好感を抱いていない読者なら、批評家や新聞記者をやり玉に挙げた部分を痛快に感じながら楽しく読めるに違いない。

『ジャーナリズム性悪説』の短所は、時事性の強い言及が多かったり、バルザックの個人的な人間関係が露骨に反映されていたりする点だろう。
19世紀のパリで活躍したジャーナリストや、当時発行されていた新聞がそれぞれどのような政治的傾向を持っていたかということに関心のある読者は、今日の日本にきわめて少ないのではなかろうか。
バルザックの小説作品以外で邦訳されているものとしては『役人の生理学』や『風俗研究』があり、個人的にはこれら二作品の方が多くの読者に受け入れられやすいのではないかと思う。

そうはいっても、鹿島氏による訳文の読みやすさには文句のつけようがないし、多数挿入されている当時のイラストが読者の目を楽しませてくれることも確実である。
小説作品だけでは飽き足りないというバルザックファンの方は、本書を手にしてみてはいかがだろうか。
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