『タッソオ』 ゲーテ(岩波文庫)

タッソオ (岩波文庫)タッソオ (岩波文庫)

書名:タッソオ
著者:ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
訳者:実吉 捷郎
出版社:岩波書店
ページ数:262

おすすめ度:★★★★




ゲーテの戯曲作品のうち、『ファウスト』に次ぐ重要な作品の一つとされるのがこの『タッソオ』である。
イタリアの後期ルネサンスが誇る大作、『エルサレム解放』の作者として知られるトルクァート・タッソを主人公にした作品で、ドイツの代表的な詩人ゲーテがイタリアの代表的な詩人であるタッソを描くという、文学ファンを大いに喜ばせる構成となっている。

フェラーラの公爵の庇護の下、『エルサレム解放』を間もなく完成させようかというタッソ。
公爵の妹との親密な間柄も彼の心を支え励ましていたが、大臣であるアントニオの帰国によって人物関係に変化が起こり・・・。
一般に、ゲーテがタッソに語らせている芸術家としての苦悩や逡巡の多くはゲーテ本人の感じていたところのものであると言われており、ゲーテに関心を持つ方であればタッソの言葉の深読みを楽しむことができるのではなかろうか。

『タッソオ』は登場人物が非常に限定的であり、主人公のタッソはもちろん、それぞれの登場人物が明確な個性を与えられて描き分けられているのが特徴となっている。
とはいえ、戯曲全体を通じて人々や舞台にはまるで動きがなく、あらすじに事件性も乏しいため、正直なところを告白すればすべての読者が本書を楽しめるかというと少々疑わしい気もする。

戯曲のジャンルとしては、『タッソオ』は繊細で敏感な芸術家気質を主軸とした性格悲劇に分類されるようだが、ゲーテの描くいささか被害妄想気味、ノイローゼ気味のタッソ像は、概ね伝記的事実に即したものになっているらしい。
タッソが後年精神に異常を来たし、幽閉されたことまであると知れば、そのような特殊な精神状態の詩人をゲーテが扱った戯曲『タッソオ』に対する読者の興味も強まるのではなかろうか。
ゲーテに興味のある方、タッソに興味のある方、いずれにもお勧めしたい一冊だ。
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