『黒いチューリップ』 デュマ(創元推理文庫)

黒いチューリップ (創元推理文庫)黒いチューリップ (創元推理文庫)

書名:黒いチューリップ
著者:アレクサンドル・デュマ
訳者:宗 左近
出版社:東京創元社
ページ数:376

おすすめ度:★★★☆☆




複数冊に及ぶのが常のデュマの長編小説にしては比較的手頃なボリュームなのがこの『黒いチューリップ』である。
政治上の動乱期をバックボーンに持つ点では本書もデュマの他の多くの作品と同様であるが、文章量が少ないというのもあってか、デュマの作品としてはややスケールの小さな作品世界を描いているように感じられる。
それだけ平易な作品であり、読者を選ばない作品であるとは言えるかもしれない。

『黒いチューリップ』の舞台は、戦争続きで政情の安定しない17世紀のオランダである。
政治のことなどお構いなしで、チューリップ栽培にしか目のない青年が、発見者には賞金まで出るという新種の黒いチューリップを作ろうと日夜努めていたのだが、彼の名付け親が政治犯として逮捕されていたものだから・・・。
暴徒と化した群集、貴族的な人々、粗野な庶民階級、心優しき乙女、といった具合に、デュマが好んで描くタイプの登場人物に読者は数多く出会うことだろう。
いくらか大袈裟な執念深さを描くあたりも、いかにもデュマの作品といったところであろうか。

王妃の首飾り』と同様、『黒いチューリップ』も創元推理文庫の一冊として刊行されてはいるが、ミステリー的な要素はほとんどない。
というより、話の展開はたいていの読者が予想できてしまうはずなので、『黒いチューリップ』はあらすじに奇抜さを求める方には不向きな作品なのかもしれない。

『黒いチューリップ』を読んで、劇作家としてスタートを切ったデュマらしい作品だと感じる読者も少なくないのではなかろうか。
事実、『黒いチューリップ』はまるで戯曲を読んでいるかのような筋立てである。
喜劇として終わるのか、悲劇として幕を閉じるのか、そして黒いチューリップは咲くのか。
万人向けとは言い難いが、デュマに興味のある方ならば楽しめる一冊になることだろう。
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