『骨董屋』 ディケンズ(ちくま文庫)

骨董屋(上) (ちくま文庫)骨董屋(上) (ちくま文庫)骨董屋(下) (ちくま文庫)骨董屋(下) (ちくま文庫)

書名:骨董屋
著者:チャールズ・ディケンズ
訳者:北川 悌二
出版社:筑摩書房
ページ数:537(上)、515(下)

おすすめ度:★★★★★




連載当時の人気の高さは比類がなく、文字通り英米を席巻したというディケンズ初期の長編小説がこの『骨董屋』である。
複数の出版社から文庫本として出版されていてもおかしくないほどの名作なので、ディケンズの愛読者に限らず、幅広い読者層にお勧めしたい。

グロテスクな品物に囲まれ、わびしい骨董屋で祖父と二人で暮らしている少女ネル。
愛するネルのために財産を築こうと、祖父は賭博に手を染めたが、資金は失われていく一方で、借金の返済のために骨董屋からも立ち退かねばならなくなってしまい・・・。
『骨董屋』は、『ピクウィック・クラブ』でその本領を発揮した、ディケンズお得意の放浪と遍歴の物語である。
幸福とは言い難い状況の下で出会いと別れを繰り返す健気なネルの行く末は、読者の関心を誘わずにはいないだろう。

『骨董屋』はネルを主人公とした物語であると紹介されることが多いようだが、私は個人的にキット少年を非常に気に入っている。
ネルが精神的で崇高な存在であるのに対して、キットは肉体的で活発な存在であり、躍動感があるだけいっそう面白いキャラクターであるように感じられるからだ。
ディケンズの作品の常で、『骨董屋』にも生き生きとした人物が数多く活躍しているので、読者はそれぞれお気に入りを見つけることができるのではないかと思う。

ディケンズならではのユーモアとペーソスは『骨董屋』においても健在である。
いくらかペーソスを盛り込み過ぎたのではないかという感はあるし、それが実際に批判の的にもなったらしいのだが、ディケンズの作品を好む方であればその筆致を不満に感じることもないのではなかろうか。
欠点を挙げようとすればいくつか挙げられなくもないが、きわめてディケンズらしい作品として強くお勧めできる作品だ。
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