『虹』 D.H.ロレンス(新潮文庫)

虹 上 (新潮文庫 ロ 1-9)虹 上 (新潮文庫 ロ 1-9)虹 下 (新潮文庫 ロ 1-10)虹 下 (新潮文庫 ロ 1-10)

書名:
著者:D.H.ロレンス
訳者:中野 好夫
出版社:新潮社
ページ数:453(上)、426(下)

おすすめ度:★★★★




ロレンスにとって四作目となる長編作品がこの『虹』である。
出版当初、内容に性的な言及が多いとして発禁処分になった作品で、『チャタレイ夫人の恋人』と同様にいわゆるロレンスの「問題作」に数えることができるだろう。
そうはいっても、『チャタレイ夫人の恋人』ほどの露骨な性的描写はないので、「問題作」として過度に期待して読むと失望することになるかもしれない。

『虹』は、イングランドの農村に暮らす富裕な農家を舞台にして始まる。
恋をし、結婚をし、子供が生まれ・・・。
あらすじ自体は特に変哲のないものと言えるかもしれないが、読みごたえあるロレンスの鋭い筆は登場人物の心理の奥深くに届くどころかときにはその魂にまで触れている。
自我の強い登場人物たちの思考や振る舞いに、読者は興味をそそられずにはいないだろう。

ロレンスの関心事といえばやはり男女関係であり、『虹』においても親子三代にわたる三組の男女の関係性が主なテーマとなっている。
それを描く過程で性的な事柄への言及も避けられないが、ロレンスの最大の関心事はそれを超えたところ、すなわち男と女という二人の人間のあり方をとことんまで突き詰めていくことにあるように思われる。
結婚生活も大きな問題の一つとして取り上げられているので、既婚者が『虹』を読むと意外に共感できる部分があるのでは、とも思う。

ロレンスの代表的な作品と呼んでもいいほどの『虹』だが、日本語訳の出版状況はかなり乏しいのが現状だ。
なお、同じ新潮文庫でも、出版年が古いものは上・中・下の全三巻で出されていたようなので、購入の際には出版年とページ数に注意が必要かもしれない。
あまり一般受けはしないようにも思われるが、ロレンスに興味のある方であれば必ずや満足いただける作品としてお勧めしたい。
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素晴らしい記事満載のブログ、拝読に感謝します

「ボルヘス」でネット検索中に、貴ブログに遭遇し、拝読しています。貴ブログのカテゴリに目の眩む思いがいたします。当方、オースティン、ゲーテ、ヘッセ、バルザック、などの作品を少々読書する程度。トーマス・マン「ワイマールのロッテ」は楽しみました。人生は短く芸術は長し、本来の意味は違うのでしょうが、古典を読むことの大切さを伝える教訓と解します。ブログ管理人・本の虫様のブログを道しるべにしつつ、残された日々を有益な読書に捧げたいと思います。有益な記事に対して深く感謝し、尊敬の気持ちを捧げます。2015年が良い年でありますよう、ブログの発展とブログ管理人・古本虫様の御健勝をお祈りします。長文のコメントで失礼しました。HN:青木明 宮城県仙台市在住 68歳

Re: 素晴らしい記事満載のブログ、拝読に感謝します

コメントありがとうございます。
過分のお褒めに与りまして恐縮です。日々の雑事ゆえに読書にあまり時間を割けないのが残念なところですが、これからも可能な限り古典文学という宝庫を散策し続け、私の出会った作品を紹介し続けていくつもりですので、今後ともよろしくお願いいたします。
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