『ポイントン邸の蒐集品』 ヘンリー・ジェイムズ(山口書店)

ポイントン邸の蒐集品ポイントン邸の蒐集品

書名:ポイントン邸の蒐集品
著者:ヘンリー・ジェイムズ
訳者:有馬 輝臣
出版社:山口書店
ページ数:277

おすすめ度:★★★★




ヘンリー・ジェイムズ中期の長編小説の一つがこの『ポイントン邸の蒐集品』である。
鳩の翼』や『金色の盃』といったジェイムズ後期の傑作が持つ特徴を数多く備えているが、それらの作品と比べるとさほど難解ではないため、ジェイムズらしい作品を読みたいという人にお勧めの一冊となっている。

数々の芸術品によって類まれな美的空間が形作られているポイントン邸。
跡取りである一人息子が婚約をしたのだが、芸術品に執念と言っても過言ではないほどの強い愛着を持つ母は、芸術を解するようには思えない婚約者の娘のことを到底受け入れることができず・・・。
ジェイムズの小説にはありがちなことだが、『ポイントン邸の蒐集品』においても、それほど大それた事件が起こるわけではない。
それでも、推理小説でも読んでいるかのように少しずつ明かされていく真実は読者の関心を引き付けてやまないことだろう。

『ポイントン邸の蒐集品』は、ジェイムズが得意とする「国際状況もの」とは異なり、舞台も登場人物もイギリス人という、徹頭徹尾イギリスの物語である。
そうはいっても、上流社会を描いている点や、実質的な登場人物が非常に限定的である点、そして何より視点人物の設定という手法によって、『ポイントン邸の蒐集品』はきわめて強くジェイムズを感じさせる作品となっている。

ジェイムズのファンなら必ずや楽しめる作品であるにもかかわらず、困ったことに『ポイントン邸の蒐集品』の流通量は何しろ少ないときている。
国書刊行会から出されているヘンリー・ジェイムズ作品集にも収録されているが、そちらも安価ではないため敷居は高いと言えるだろう。
ここ何年かの動向を見てもジェイムズの作品は着実に出版されていっているようなので、『ポイントン邸の蒐集品』の文庫化される日を待ちたいと思う。
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