『ジャングルのけもの』 ヘンリー・ジェイムズ(審美社)

ジャングルのけものジャングルのけもの

書名:ジャングルのけもの
著者:ヘンリー・ジェイムズ
訳者:野中 恵子
出版社:審美社
ページ数:122

おすすめ度:★★★★




ジェイムズ後期の代表的な短編作品の一つがこの『ジャングルのけもの』である。
鳩の翼』と同時期の作品ということで、一筋縄ではいかない少々難解な作品となっているため、一般受けする作品ではないかもしれない。
しかし、本書を難解に感じてしまう読者といえども、実質的な登場人物はわずか二人だけであるにもかかわらず、ここまで読み応えのある陰影に富んだ心理模様を描き出すことができるとはさすが後期のジェイムズだけあると、少なくとも感心はさせられるのではなかろうか。

いつの日か何か良からぬ恐ろしいことに見舞われるのではないかという強い予感、まるでジャングルの奥のけものが襲いかかろうとこちらを窺っているかのような予感を抱きながら暮らしているジョン・マーチャー。
ほんの偶然から、彼はこの予感に関して話し合える友人として、かつてイタリアで会ったことのあるメイ・バートラムを得たのだったが・・・。
予感という抽象的な物事を軸に話が進んでいくので、『ジャングルのけもの』はそれだけいっそう難解になっているように思う。
これが長編作品であればあまりお勧めできなかったかもしれないが、コンパクトな作品なのでだいぶ挑戦しやすくなっていると言えるだろう。

この『ジャングルのけもの』は『死者の祭壇』と同じシリーズに属しており、随所に挿絵として版画が収められている。
個人的には、このシリーズはページ数の割りに割高感が拭えないので、挿絵を省いて安価にしてくれたほうがありがたいと感じているのだが、ジェイムズの代表的な短編作品の一つであり、味読に値する『ジャングルのけもの』であれば、その価格設定も許容範囲だと思われる。
ジェイムズの後期作品に興味のある方は是非手にしてみていただければと思う。
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