『D.H.ロレンス戯曲集―『一触即発』『ダビデ』『ノアの洪水』』 D.H.ロレンス(リーベル出版)

D.H.ロレンス戯曲集―『一触即発』『ダビデ』『ノアの洪水』D.H.ロレンス戯曲集―『一触即発』『ダビデ』『ノアの洪水』

書名:D.H.ロレンス戯曲集―『一触即発』『ダビデ』『ノアの洪水』
著者:D.H.ロレンス
訳者:白井俊隆、高橋克明、伊沢祐子、後藤真琴、小野寺章
出版社:リーベル出版
ページ数:286

おすすめ度:★★★★




ロレンスにとって後期作品とも言える『一触即発』、『ダビデ』、『ノアの洪水』の三編を収録しているのがこの『D.H.ロレンス戯曲集』である。
生前自作が上演されることの少なかったロレンスのことを劇作家として成功した人物であるとは言えないだろうが、ロレンスに興味のある読者にとっては彼の戯曲はロレンスらしさを見出すことのできる汲めども尽きない泉であることは間違いないだろう。

イングランドの炭坑の町を舞台にした『一触即発』は、政治思想に男女関係を織り交ぜたいかにもロレンスといった作品になっている。
資本家と労働者の間、つまり労使の対立を扱っているあたり、執筆当時の時代を感じさせるものがある。
『一触即発』で主旋律を成すテーマがさほど今日的ではないにせよ、作品が描く状況や背景は非常に把握しやすいので、予備知識がなくても作品世界に入っていきやすいのが特徴であるように思う。

未完の作品である『ノアの洪水』は、10ページそこそこの断片に過ぎないということもあってかなり玄人向けであり、楽しめる読者は非常に限られるように思われる。
他方で、ロレンスにしては異色の観すらある旧約聖書に題材を求めた『ダビデ』は、質の上でも量の上でも非常に興味深い作品になっている。
ダビデにまつわるオリジナルのストーリーは確固たるものが存在しているので、その決定的な素材をロレンスがどう料理するのかを読者は楽しむことができるのではなかろうか。

本書『D.H.ロレンス戯曲集』の訳文が必ずしも読みやすいかというと素直に肯定できない部分もあるにはあるが、本書と併せて『ホルロイド夫人やもめになる』などのロレンス初期の戯曲作品を収めたもう一冊の『D.H.ロレンス戯曲集』を読めば、ロレンスの戯曲はその大半を読破したことになる。
ロレンスの戯曲に関心のある方にはこの二冊をお勧めしたい。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク