『ラパチーニの娘』 ホーソーン(松柏社)

ラパチーニの娘―ナサニエル・ホーソーン短編集ラパチーニの娘―ナサニエル・ホーソーン短編集

書名:ラパチーニの娘
著者:ナサニエル・ホーソーン
訳者:阿野文朗
出版社:松柏社
ページ数:222

おすすめ度:★★★★




表題作を含むホーソーンの短編作品六編を収録しているのが本書『ラパチーニの娘―ナサニエル・ホーソーン短編集』である。
本書の帯の紹介文によるとホーソーンの「珠玉の短編」を訳出したとのことだが、収録作品の質を思えば、それもあながち誇張ではないように思われる。

本書は『ウェイクフィールド』、『痣』、『ブルフロッグ夫人』、『僕の親戚モリノー少佐』、『若いグッドマン・ブラウン』、『ラパチーニの娘』を収録している。
ボルヘスの称賛によって格段に知名度を上げた『ウェイクフィールド』は、いまやホーソーンの短編作品の中では押しも押されぬ代表作となっているので必読の作品であろう。
コミカルな小品『ブルフロッグ夫人』からはホーソーンの意外な一面が読み取れるし、『痣』と『ラパチーニの娘』からはホーソーンがストーリー性に富んだSF風の作品を書いていたことを知ることができる。
また、『ラパチーニの娘』の前枠とでも呼ぼうか、本編への導入部の面白さも注目に値するだろう。

世間の常識から逸脱してしまっている変人、いわば「はみ出し者」を扱わせた場合、ホーソーンの巧みさには舌を巻かざるを得ない。
そのような人物の描写はつい陰険な筆致になってしまってもおかしくないところなのだが、ホーソーンによる品のある文章は明朗な雰囲気を失わないため、読者の気持ちが離れていくことがないし、読後の印象もどこか心地よいものがある。
これは本書の収録作品においても発揮されている特徴だと思うので、存分に味わっていただければと思う。

ホーソーンの短編作品はこれまで岩波文庫の『ホーソーン短篇小説集』で読むのが一般的だったが、訳文の読みやすさでいえば新訳であるこの『ラパチーニの娘』の方が上であるように感じられる。
岩波文庫の『ホーソーン短篇小説集』と比べると収録作品数こそ多くはないが、ホーソーンの短編作品を読んでみたい方にはお勧めできる一冊だ。
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