『バーナビー・ラッジ』 チャールズ・ディケンズ(集英社)

世界文学全集〈15〉バーナビー・ラッジ (1975年)世界文学全集〈15〉バーナビー・ラッジ (1975年)
(1975)
不明

商品詳細を見る

書名:世界文学全集〈15〉バーナビー・ラッジ
著者:チャールズ・ディケンズ
訳者:小池滋
出版社:集英社
ページ数:638

おすすめ度:★★★☆☆




ディケンズ初のミステリー風長編作品がこの『バーナビー・ラッジ』である。
連載の始まったばかりの頃に、大西洋の向こう側でエドガー・アラン・ポーが殺人の謎を解いてしまったことでも知られる作品だ。
この『世界文学全集〈15〉バーナビー・ラッジ』には、ディケンズの全小説の中で最も読まれていると思われる『クリスマス・キャロル』も併録されている。

バーナビー・ラッジは、頭の働きの鈍い純朴な少年で、ただ周りの人間に翻弄されるばかりでとにかく歯切れの悪い主人公だ。
それが原因かどうかは知らないが、『オリヴァ・ツウィスト』のオリヴァや『ニコラス・ニクルビー』のニコラスと比べると登場頻度が格段に低い。
また、推理小説草創期の作品だけあって、『バーナビー・ラッジ』の冒頭で描かれる殺人の謎は、テレビや映画などによって無数のどんでん返しに慣れてしまっている今日の読者、当時の人々よりはるかにポーの思考に接近している今日の読者には、そう真新しいものではないだろう。
そういう意味では、ミステリーとして読むには少々物足りない作品だと思う。
イギリス〈2〉/集英社ギャラリー「世界の文学」〈3〉イギリス〈2〉/集英社ギャラリー「世界の文学」〈3〉
(1990/06/20)
川村 二郎、 他

商品詳細を見る

翻訳の少ない『バーナビー・ラッジ』だが、右の『イギリス〈2〉/集英社ギャラリー「世界の文学」〈3〉』にも同じ小池先生の翻訳が収められている。
E・ブロンテ『嵐が丘』、ハーディ『ダーバヴィル家のテス』も訳出してあるのはうれしい限りだが、それだけ本の重厚感は増してしまっている。
文字サイズや印刷の綺麗さなどは非の打ち所がないのだが、全1348ページと、何しろ重たいので扱いにくいというのが欠点だ。

同時代のミステリー風の作品を読むのなら、ウィルキー・コリンズのほうがお勧めできる。
彼はディケンズとも親しく交流しており、『エドウィン・ドルードの謎』などでディケンズの作品がミステリー色を濃くしていく一因ともなったと言われているほどで、ミステリーに関してはコリンズのほうが一枚上手だろう。
ディケンズの最大の長所である巧みな人物描写も、『オリヴァ・ツウィスト』や『デイヴィッド・コパフィールド』などを上回ってはいないのではなかろうか。
失敗作とは言わないまでも、『バーナビー・ラッジ』は新品での入手が難しく、その他の傑作が素晴らしいディケンズだけに、つい他の作品をお勧めしたくなるというのが正直な感想だ。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク