『教授』 シャーロット・ブロンテ(みすず書房)

教授 (ブロンテ全集 1)教授 (ブロンテ全集 1)

書名:教授
著者:シャーロット・ブロンテ
訳者: 海老根 宏、広田 稔、武久 文代
出版社:みすず書房
ページ数:439

おすすめ度:★★★☆☆




ジェイン・エア』の作者として知られるシャーロット・ブロンテが初めて書いた本格的な長編作品がこの『教授』である。
本書には『エマ』と『ウィリー・エリン』という作品も収められているが、いずれも30ページ程度であり、まして未完の作品や断片にすぎないことから、多くの読者の関心を引くものであるとは考えにくい。
本書はあくまで『教授』を目当てに手にされるべき本であろう。

これといった財産もなく、有力な親戚の後ろ盾もなくしてしまった青年、ウィリアム・クリムズワース。
実の兄からもつれない仕打ちで迎えられる彼だったが、自らの力で生計を立て、精神的な自由をも勝ち取ることができるのか・・・。
主人公が男性であるにもかかわらず、『教授』にはシャーロット自身の実体験に基づく部分が多く、特にブリュッセルの女学校を舞台にする場面では精彩に富んだ記述にふんだんに出会うことができる。
他方で、初期作品であるという予備知識がそうさせるのかもしれないが、小説として細部がいまひとつ詰め切れていない、そんな印象も受ける作品だ。

ジェイン・エア』のような確固たる代表作があるシャーロット・ブロンテの場合、どうしても他の作品はその代表作と比較の対象になってしまうものだが、そういう面では『教授』はおあつらえ向きの作品となっている。
主人公の性別の違い、境遇の類似などの目立ったポイントに意識を向けて読むだけでも、一味違った鑑賞が可能になるように思う。

無名だったシャーロットが『教授』を出版しようとした際、複数の出版社にことごとく断られたという経緯があるらしい。
確かに、『教授』によってシャーロットが今日獲得しているような名声を得ることができたかというと、否定的な意見を持つ方が多いのではなかろうか。
本書の価格帯からしておのずとそうなるだろうが、本書はやはりシャーロット・ブロンテに強い関心を持っている方向けの本であると言える。
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