『寓話』 フォークナー (岩波文庫)

寓話〈上〉 (岩波文庫)寓話〈上〉 (岩波文庫)寓話〈下〉 (岩波文庫)寓話〈下〉 (岩波文庫)

書名:寓話
著者:ウィリアム・フォークナー
訳者:阿部 知二
出版社:岩波書店
ページ数:348(上)、404(下)

おすすめ度:★★★★




フォークナー後期の長編作品の中で、代表的な位置付けにある作品の一つがこの『寓話』である。
フォークナーとキリスト教との関係性を顕著に示す作品であり、フォークナーの宗教観を知る上では格好の鍵となるのではなかろうか。

時は第一次大戦中、場所はフランス軍とドイツ軍が対峙する最前線。
ある日のこと、両軍ともに兵士が戦闘を放棄し、戦争が止まってしまうという奇妙な事態に。
兵士たちに戦闘を放棄するように仕向けた首謀者と目される男と、その一味である十三人が捕らえられ・・・。
つかみどころのない前半部分に、独特な理念を持ち込む後半が続く『寓話』ではあるが、章立て毎に何曜日の出来事なのかが書かれているので、フォークナーの長編作品にしては時間の流れはわかりやすいほうだといえる。
しかし、一文が妙に長く、時として論旨があいまいになりがちの複雑で力強いスタイルは『寓話』でも健在であり、読み応えはある反面、難解な作品であることも事実であろう。

神話や聖書に題材を求める場合など、先にある程度の型が決まっている作品では、読者がプロットやディテールにおいていささか窮屈な印象を受けるというのはありがちなことだが、この『寓話』からはこの窮屈さを感じることが少ないように思う。
フォークナーの奔放な創作力は、それが仮にキリスト教道徳の根幹である新約聖書であっても、既成の型に収まりきるものではないということなのかもしれない。

フォークナーにはいくつか作品群があり、それらは複数作品を読むことで一層味わいがあるものだが、この『寓話』は他の作品との直接的な関係性がほぼないので、それだけ単独で楽しめる作品になっている。
そうはいっても、『寓話』はフォークナーを既に何冊か読んだことのある人に向いている、いわば玄人向けの作品であるという気もする。
フォークナーをより深く鑑賞したい方にお勧めしたいと思う。
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