『ペルシーレス』 セルバンテス(ちくま文庫)

ペルシーレス(上) (ちくま文庫)ペルシーレス(上) (ちくま文庫)ペルシーレス(下) (ちくま文庫)ペルシーレス(下) (ちくま文庫)

書名:ペルシーレス
著者:ミゲル・デ・セルバンテス
訳者:荻内勝之
出版社:筑摩書房
ページ数:341(上)、340(下)

おすすめ度:★★★☆☆




ドン・キホーテ』で知られるセルバンテスによる、最後の長編作品がこの『ペルシーレス』である。
「ペルシーレスとシヒスムンダの苦難」というのが原題であるが、かなり読み進めてもペルシーレスとシヒスムンダとは何者なのかはっきりしないという、一風変わった作品になっている。
全般にストーリー性は強く、すらすら読める小説であるあたりにセルバンテスらしさを感じることができるはずだ。

孤島に閉じ込められたり、野蛮人に殺されそうになったり、船が転覆したり、塔から転落したりと、『ペルシーレス』の登場人物たちには驚くほど多くの災難が続けざまに降りかかってくる。
ドン・キホーテ』がきわめて現実的な物語であったのに対し、『ペルシーレス』には非現実的、時には幻想的な部分さえ散見するという特徴がある。
そういう意味では、非現実的な騎士道物語を真っ向から否定したのがセルバンテスであるという紋切り型の解釈を覆しうる作品と言えるかもしれない。

『ペルシーレス』の筋の運びは行き当たりばったりの感が強く、それだけに登場人物も多く、新たに登場した人物の語るエピソードによる本筋からの脱線もきわめて多い。
美男美女ばかりが登場するという不自然さなども含め、いかにもルネサンス的というか、古風な雰囲気を帯びており、初めて読んだのにどこか懐かしさを覚えかねない小説でになっている。

セルバンテスに興味のある方は少なくないはずだが、『ペルシーレス』にセルバンテスの手腕が発揮されていることを期待すると、読者の側の期待値が高過ぎるからか、期待が裏切られる可能性が高いような気がする。
スペインが誇る文豪セルバンテスの最後の作品であるにもかかわらず、『ペルシーレス』の注目度が低いという事実に納得できてしまう読者が大半なのではなかろうか。
そうはいっても、セルバンテス像を補完するための作品としては十分に読む価値があるのではないかと思う。
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