『クローヴィス物語』 サキ(白水Uブックス)

クローヴィス物語 (白水Uブックス)クローヴィス物語 (白水Uブックス)

書名:クローヴィス物語
著者:サキ
訳者:和爾 桃子
出版社:白水社
ページ数:270

おすすめ度:★★★★★




『クローヴィス物語』は、生前に出された数少ないサキの短編集の一つである。
日本で出されているサキの短編集は傑作選として編まれたものが大半である中で、『クローヴィス物語』のような一つの短編集を完訳するというのは珍しいことでもある。
そういう意味では、サキのファンに歓迎されることが必至の本であるといえるのではなかろうか。

『クローヴィス物語』には、『トバモリー』や『スレドニ・ヴァシュタール』といったサキの代表的な作品を含む28編の短編作品が収録されている。
表題になっているクローヴィスとは、本書収録作品の多くに顔を出している生意気で毒舌家の青年である。
常識的に評価すれば、クローヴィスは好感の持てない奴でしかないのだが、彼の発するとげのある発言や、退屈しのぎに行ういたずらなどが小説世界に組み込まれると、途端に読者を強く魅了することとなるのだから不思議なものだ。
言うまでもないことだが、読者の皆様は決して彼の真似をしないほうがいいだろう。
レジナルド (サキ・コレクション)レジナルド (サキ・コレクション)

『クローヴィス物語』の読者には、同じくサキの短編集『レジナルド』もお勧めしたい。
レジナルドとクローヴィスの二人は、似ているようで相違点も多く、比較して読むには互いに格好の存在となっているに違いない。
ただし、彼らが放つ皮肉は必ずしも平易なものばかりではないので、読者の側にもそれを読み解く一定の力が必要となるかもしれない。

名作揃いの『クローヴィス物語』であるだけに、岩波文庫の『サキ傑作集』などですでにサキの作品に触れたことがある方であれば、本書の中に見知った作品をいくつも見出すことだろう。
しかし、編者が取捨選択した短編集で読んでいる限りは、サキが編んだとおりに観賞することができないという物足りなさが常につきまとってしまうものだが、その点、本書には出版されたとおりのものが読めるという他にはないメリットがある。
いかに収録作品の重複があろうと、サキに関心のあるすべての方にお勧めしたい一冊だ。
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