『オリヴィエ・ベカイユの死/呪われた家』 エミール・ゾラ(光文社古典新訳文庫)

オリヴィエ・ベカイユの死/呪われた家 ゾラ傑作短篇集 (光文社古典新訳文庫)オリヴィエ・ベカイユの死/呪われた家 ゾラ傑作短篇集 (光文社古典新訳文庫)

書名:オリヴィエ・ベカイユの死/呪われた家
著者:エミール・ゾラ
訳者:國分 俊宏
出版社:光文社
ページ数:371

おすすめ度:★★★★




ゾラの短編集を文庫本で出版するという、これまでありそうでなかった本がこの『オリヴィエ・ベカイユの死/呪われた家』である。
ルーゴン・マッカール叢書という桁外れの偉業のためか、長編小説作家としての印象がきわめて強いゾラではあるが、本書を読めばゾラの短編作家としての並々ならぬ才能に読者は気付かされるのではなかろうか。
ゾラという作家に興味はあるが、『居酒屋』や『ナナ』といった長編に手を出すことを躊躇している方にとっても、ゾラを知る格好の足掛かりになるはずだ。

本書には表題作となっている二作品の他に、『ナンタス』、『シャーブル氏の貝』、『スルディス夫人』が収録されている。
主人公が死んだところから始まる物語である『オリヴィエ・ベカイユの死』は、その設定の特異が読者を強く引き付けずにはいないだろう。
ゴシック風な書き出しで始まる『呪われた家―アンジュリーヌ』もまた、ストーリーに引っ張られているうちに気が付けば読み終えてしまっているというスピード感あふれる作品だ。

年齢差のある夫婦をコミカルなタッチで描いた『シャーブル氏の貝』の存在は、生真面目な文豪というゾラのイメージを覆す可能性を秘めている。
画家の妻を主人公に据えた『スルディス夫人』は、芸術家小説の一つに数えることができる。
ゾラをよく知る読者であれば『制作』を想起するはずだが、『スルディス夫人』を読むだけでも、ゾラの絵画に対する造詣の深さを推し量ることができようというものだ。

当然と言えば当然の話ではあるが、本書の収録作品には長編作品ほどの雄大さや奥行きはないものの、コンパクトにまとまったストーリー性の強さは多くの読者を楽しませてくれるに違いない。
収録作品はすべて読みやすいものばかりなので、幅広い読者層に楽しんでもらえるのではないかと思う。
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