『偽りの愛人』 バルザック(水声社)

偽りの愛人 (バルザック愛の葛藤・夢魔小説選集)偽りの愛人 (バルザック愛の葛藤・夢魔小説選集)

書名:偽りの愛人 (バルザック愛の葛藤・夢魔小説選集)
著者:オノレ・ド・バルザック
訳者:私市保彦、加藤尚宏、澤田肇、博多かおる
出版社:水声社
ページ数:352

おすすめ度:★★★★




水声社のバルザック愛の葛藤・夢魔小説選集の第一巻として出されたのが本書『偽りの愛人』である。
表題作の他に三編の中編作品を収録する作品集となっているが、テーマが絞られているだけに非常にまとまりのある一冊になっているように感じられる。
人間喜劇の「私生活情景」という、ほとんどはずれのないカテゴリーから選択されているというのも特筆すべき点となるだろう。

本書には『ソーの舞踏会』、『二重の家庭』、『偽りの愛人』、『捨てられた女』の四編が収録されている。
おそらく偶然ではあろうが、『ソーの舞踏会』はつい最近ちくま文庫からも出版されており、また、『二重の家庭』と『捨てられた女』もちくま文庫から出された『オノリーヌ』にそれぞれ収録されているため、バルザックのファンが真新しく感じるのは『偽りの愛人』だけとなるかもしれない。

『偽りの愛人』は、ポーランドの亡命貴族がパリの令嬢と結婚するという書き出しで始まる。
そしてその亡命貴族の家には、彼の生涯の親友である同じくポーランドの亡命貴族が住んでいて・・・。
バルザックといえば小説冒頭のうんちくがくどいという、バルザック好きの読者でも苦笑いしてしまうような悪い癖があるが、『偽りの愛人』にもしっかりその悪癖が顔を覗かせている。
しかし、そこさえ乗り切れば、あとは本書の収録作品中でも最も愛の葛藤というテーマにふさわしい小説世界が読者を待っているので、根気よく読み進めていただければと思う。

これまでにも水声社からはバルザックの選集がいくつか出されていたが、そこにこの新しい選集が加わるという。
本書の収録作品はたまたま他社から刊行されたものに収められているものがほとんどだったが、第二巻以降の表題を見る限りではこれまであまり注目を浴びてこなかった作品が訳出されることになりそうで、続刊に対するバルザックファンの期待が自ずと高まるというものだ。
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