『ジャック・ロンドン幻想短編傑作集』 ジャック・ロンドン(彩流社)

ジャック・ロンドン幻想短編傑作集ジャック・ロンドン幻想短編傑作集

書名:ジャック・ロンドン幻想短編傑作集
著者:ジャック・ロンドン
訳者:有馬 容子
出版社:彩流社
ページ数:237

おすすめ度:★★★☆☆




今世紀に入っても新刊の絶えないジャック・ロンドンの翻訳出版であるが、2008年に彩流社から出されたロンドンの短編集が本書『ジャック・ロンドン幻想短編傑作集』である。
収録されている5編のうち4編が本邦初訳とのことで、ジャック・ロンドンに関心のある方にこれまであまり注目されてこなかった真新しい作品を複数提供してくれる一冊となっている。

本書には『夜の精』、『赤い球体』、『コックリ占い板』、『古代のアルゴスのように』、『水の子』の5編が収録されている。
物語の舞台に基づいて広義でとらえれば、『夜の精』と『古代のアルゴスのように』はクロンダイクものに、『赤い球体』と『水の子』は南洋ものに、それぞれ分類することもできるだろうか。
幻想的であったり、SFじみていたりと、いかにもロンドンらしい幅広い作風において、短編作家としてのロンドンの手腕が存分に発揮されているという印象を本書の読者は受けるに違いない。

心霊的というかオカルト的というか、怪しい雰囲気ながらもストーリー性の強さが魅力の『コックリ占い板』の原題は"Planchette"であり、"Planchette"がどのようなものを指しているのかわからないと内容を把握しにくいかもしれないので、先に検索でもしてイメージを持っておくことをお勧めしたい。
頑固な老人がゴールドラッシュ熱に駆られるという筋書きの『古代のアルゴスのように』は、高齢ながら過酷な環境に挑む老人の運命が読者の心を離さないことだろう。
また、ハワイのメルヘンとでも呼べそうな『水の子』は、ロンドンの短編作品の中でも特に有名なものであるが、知名度の高さを納得させるだけのものはあると感じられるのではなかろうか。

『ジャック・ロンドン幻想短編傑作集』と銘打っている本書ではあるが、必ずしも収録作品のすべてが幻想的な作品かというと小首を傾げたくなる部分もあるし、誤植や訳文の混乱が見られる部分もあるのでそこも減点せざるをえないが、ロンドンに興味のある読者を楽しませるだけのものは十分備えていると言える。
ジャック・ロンドンを何冊も読んでいる方に次の一冊としてお勧めしたい、そんな本だ。
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