『ミスター・ヌーン』 D.H.ロレンス(集英社)

ミスター・ヌーンミスター・ヌーン

書名:ミスター・ヌーン
著者:D.H.ロレンス
訳者:森 晴秀
出版社:集英社
ページ数:354

おすすめ度:★★★★




D.H.ロレンスの未完の小説と思われていたが、ロレンスの死後数十年も経ってから後半部分の原稿が見つかり、完結した作品として日の目を見たのが本書『ミスター・ヌーン』である。
後半部分がロレンスによって破棄されたのは、関係者が知れば激昂するような自伝的要素が濃すぎたからに他ならず、事実、『ミスター・ヌーン』においては、ロレンスとその妻フリーダの関係性が浮き彫りになっているように感じられる。

豊かな才能を持ちながらも、イングランドの田舎町でくすぶっているギルバート・ヌーン。
尻の軽い娘との情事を楽しみながら、漫然とした日々を送っていたのだが、そんな彼にも町を飛び出さざるをえない転機が訪れ・・・。
ロレンスにとって終生のテーマであった、性を軸とした男女の関わり方をどう考えるかという問題、それが『ミスター・ヌーン』でも重点的に表現されている。
少々回りくどい比喩による説明が続く箇所もなきにしもあらずだが、『ミスター・ヌーン』には豊富な自然風景の描写も含まれてるので、そうバランスを失ってはいないように思われる。

『ミスター・ヌーン』の場合、第一部と第二部の繋がりが緩いのも特徴の一つと言えるだろう。
それもそのはず、第二部の主人公ヌーンはロレンス自身をモデルとしているが、第一部のヌーンは別人をモデルにしているらしいので、ロレンスに関心の強い方であれば、第二部のほうをより楽しめるような気がする。

ロレンスの「最新作」であるにもかかわらず、『ミスター・ヌーン』はほとんど脚光を浴びていないという不幸に見舞われている。
訳者によるコメントにもあるように、ロレンスにしては珍しい軽妙な筆致が随所に見られる、いわば変わり種の作品となっているので、ロレンスに興味のある方であればぜひ一読してみるべきではないかと思う。
新刊での入手は困難だが、中古ならわずかに出回っているので、早めの入手をお勧めしたい。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク