『サートリス』 フォークナー(白水社)

サートリスサートリス

書名:サートリス
著者:ウィリアム・フォークナー
訳者:林 信行
出版社:白水社
ページ数:352

おすすめ度:★★★★




フォークナーにとって三作目にあたる長編作品がこの『サートリス』である。
フォークナーの作品世界の中心に位置するヨクナパトウファものの第一作目であり、その後の作品でも活躍する登場人物が多数初登場を果たすという『サートリス』は、いわば彼が本領を発揮しだした作品とみなすことができると思う。
そういう意味では、フォークナーに関心のある読者を引き付ける魅力を十分に持っているのではなかろうか。

『サートリス』は、その名のとおり南部の名家であるサートリス一家を描いている物語である。
旧弊な習慣を守っている老サートリスと、その孫であり、第一次世界大戦から生還して、新時代の象徴である自動車を乗り回す孫のサートリスが主要人物であると言えるだろう。
しかし、新旧の価値観の対比だけに止まらないのが『サートリス』の面白いところでもある。
心理描写は少ないが、それだけに読者が登場人物の心情を推測し、自ら補わなければならないというのも楽しみの一つと言えるかもしれない。

フォークナーは、第一次世界大戦後のロスト・ジェネレーションを描いた作家の一人と紹介されることが多いが、彼の代表作を読んでも、必ずしもそれを感じ取ることができるとは限らない。
その点、『サートリス』は典型的と言ってもよいほどにわかりやすくロスト・ジェネレーションに焦点を当てて描かれた作品なので、多面性を持つフォークナーという作家の一面を明確にとらえることができるはずだ。

『サートリス』に描き出される一つ一つの細かなエピソードは、それを読んでいる最中にはさほど重要に感じられないが、読後に全体を振り返ってみると、南部社会の見事な群像が描き出されていたことに読者は気付かされることだろう。
そしてその群像をより一層知るために、ヨクナパトウファものの他の短編や長編を読みたくなることはほぼ間違いない。
あまり注目を浴びない作品ではあるものの、文体にも難解さは見られないので、気軽に手にしていただければと思う。
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