『ワーニャおじさん』 チェーホフ(岩波文庫)

ワーニャおじさん (岩波文庫)ワーニャおじさん (岩波文庫)

書名:ワーニャおじさん
著者:アントン・チェーホフ
訳者:小野 理子
出版社:岩波書店
ページ数:148

おすすめ度:★★★★★




かもめ』と並び、チェーホフの四大戯曲の一つに数えられているのがこの『ワーニャおじさん』である。
劇の舞台が田舎であることや、劇全体を支配している雰囲気など、基調となる部分は『かもめ』と非常に似ており、複数の人物が主役級の存在感を放っているという点も同様で、非常にチェーホフらしい作品と言えるのではなかろうか。

自らの青春を、義兄である大学教授を支えるために空費したと感じ、いまや何一つ将来に希望を持つことができないワーニャおじさん。
その上、大学を退職した教授が、美しい後妻を連れてワーニャの暮らす領地に帰ってきたものだから、人間関係が妙にぎくしゃくすることになってしまい・・・。
チェーホフの戯曲作品すべてに対して言えることであるが、舞台に登場人物が二人だけになり、彼らが対話を交わしているところが、最も興味深い場面を成していると思われる。
そしてこの『ワーニャおじさん』においても、いろいろな組み合わせによる二人だけのシーンがあり、それぞれがとても重要な意味を持っているようだ。

個人的には、大学教授がワーニャの妹である先妻との間に設けたこどもであるソーニャの、不器用で引っ込み思案でありつつも健気な姿が、自己主張の強い他の登場人物たちとは別種の輝きを放っていると思う。
そもそも、本書のタイトルである「ワーニャおじさん」という呼称にしても、ワーニャの姪に当たるソーニャの視点から呼ばれたものであるし、ワーニャとソーニャの関係性に重点を置いて読んでみるのも面白いのではなかろうか。

それほど起伏に富んだ筋書きではないのだが読み応えだけは抜群という、いかにもチェーホフらしい作品が本書『ワーニャおじさん』である。
チェーホフの戯曲に興味のある方であればぜひ読んでみるべき本であることは間違いない。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク