『桜の園・三人姉妹』 チェーホフ(新潮文庫)

桜の園・三人姉妹 (新潮文庫)桜の園・三人姉妹 (新潮文庫)

書名:桜の園・三人姉妹
著者:アントン・チェーホフ
訳者:神西 清
出版社:新潮社
ページ数:284

おすすめ度:★★★★★




チェーホフの四大戯曲の中で、三番目の作品となる『三人姉妹』と、四番目の作品となる『桜の園』が本書には収められている。
桜の園』はすでに別の記事で紹介済みなので、今回は勝手ながら『三人姉妹』だけを紹介することにしたい。

両親を亡くしたオーリガ、マーシャ、イリーナの三人姉妹は、兄弟であるアンドレイと物質的には不自由なく暮らしているのだが、それぞれがそれぞれの憂鬱を抱えている。
夢や理想が高すぎるからなのか、夫選びが軽率だったからなのか、あるいは周囲の人間に悩まされているだけなのか・・・。
彼女たちの将来には、確かに彼女たちが望むような幸福の到来は期待できそうもなく、全体的にはやや暗い雰囲気に支配された作品であると言える。
しかし、単に不遇な現在を嘆くだけの陰鬱な作品に堕してしまわないところが、チェーホフのうまさと言うべきだろう。

チェーホフの戯曲に見られる明確な主人公の不在という特徴が『三人姉妹』においては影を潜めていて、そのタイトルのとおり三人の姉妹を中心に据えた作品となっている。
そしてその三人が並列の立場に置かれているということが、この作品世界に独特の幅の広さを持たせているようだ。

例によってチェーホフ流の哀愁を帯びた『三人姉妹』ではあるが、筋書きにおける構成の巧みさという観点からすると、チェーホフ作品の中で最高傑作なのではないかと思われる。
次から次へと数多くのエピソードが詰め込まれてはいるものの、それらが過不足なく描かれ、互いに無理なく調和しているのである。
読みやすい作品だからといってさらりと読み流すよりは、一人一人の心情を深読みしながらの精読をお勧めしたい、そんな作品だ。
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