『桜の園/プロポーズ/熊』 チェーホフ(光文社古典新訳文庫)

桜の園/プロポーズ/熊 (光文社古典新訳文庫)桜の園/プロポーズ/熊 (光文社古典新訳文庫)

書名:桜の園/プロポーズ/熊
著者:アントン・チェーホフ
訳者:浦 雅春
出版社:光文社
ページ数:264

おすすめ度:★★★★




チェーホフ最後の戯曲作品である『桜の園』と、一幕ものの笑劇二編を収めたのが本書『桜の園/プロポーズ/熊』である。
桜の園』はすでに別の記事で紹介済みなので、さほど注目されることのない作品ではあるものの、『プロポーズ』と『熊』に焦点を絞ってみることにしたい。

近所の地主が娘をもらいに来るという、平和的筋書きで始まる『プロポーズ』ではあるが、話せば話すほどに係争地を巡る意見の食い違いが明確になるだけで、結果的には大喧嘩になってしまう。
果たして二人は結婚というハッピーエンドにまでこぎつけられるのか・・・。
『熊』のほうは、熊のように粗野な男が、ある未亡人のもとへと、亡き夫がこしらえた借金の取り立てにやってくるというところから始まる。
ところが、借金を払おうにも手持ちのお金がないから未亡人は少し待ってくれと頼むのに、「熊」は今すぐ金がいると言ってそれを聞き入れようとしないものだから・・・。

『プロポーズ』も『熊』も、スピード感のある掛け合いが中心となっている作品であり、ページ数の少なさも手伝ってすぐに読み終わってしまうことだろう。
当然ながら登場人物もそれぞれ三人だけと限られているので、わかりやすいことこの上ない作品に仕上がっている。

人物造形に深みが足りなく、ストーリー中でも滑稽さが前面に押し出されている『プロポーズ』や『熊』のような笑劇は、あまり高い評価を受けないのが普通である。
それでいて、『プロポーズ』と『熊』を読んだ読者は、チェーホフの他の笑劇も読んでみたいと強く感じずにはいられないことだろう。
強い感銘を受けることはありえないかもしれないが、読書を楽しみたいという根本的欲求は必ず満たしてくれるものと思う。
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