『カシタンカ・ねむい』 チェーホフ(岩波文庫)

カシタンカ・ねむい 他七篇 (岩波文庫)カシタンカ・ねむい 他七篇 (岩波文庫)

書名:カシタンカ・ねむい
著者:アントン・チェーホフ
訳者:神西 清
出版社:岩波書店
ページ数:313

おすすめ度:★★★★




チェーホフの短編小説9編を収めたのが本書『カシタンカ・ねむい』である。
チェーホフの代表的な短編作品を3編選べと言われれば、本書の収録作品はそこに入らないかもしれないが、仮に30編選べと言われれば、そのほとんどが選ばれるのではないかというような、準代表作とでも呼ぶべき作品が収められている。

本書は表題作である『カシタンカ』と『ねむい』の他に、『嫁入り支度』、『かき』、『小波瀾』、『富籤』、『少年たち』、『大ヴォローヂャと小ヴォローヂャ』、『アリアドナ』を収録している。
社会的な弱者であったり、日々の生活に退屈しきった田舎の有閑階級を描いていたりする点は、いかにもチェーホフらしい視点と言えるだろう。
個人的にお勧めしたい作品は『ねむい』で、話の結末の付け方は多少チェーホフらしからぬ気がしないでもないが、それだけインパクトのある作品になっていると思う。

本書の翻訳は、チェーホフの翻訳を語る上で欠かすことのできない存在である名訳者の神西氏によるものだが、本書には神西氏のチェーホフ論である『チェーホフの短篇に就いて』と『チェーホフ序説』も併録されている。
そのチェーホフ論に100ページくらい割かれているため、中にはチェーホフの作品の翻訳をその分増やしてくれればよかったのにと思う読者もおられるかもしれないが、いかに執筆された時期が過去のことであるとはいえ、神西氏のチェーホフ論がチェーホフの短編世界に関する解説としてきわめて優れたものであることは間違いないだろう。

本書『カシタンカ・ねむい』の収録作品は、それぞれの作品の長さも手頃で読みやすく、内容的にもとっつきやすいものばかりである。
チェーホフを知らない読者が、本書をチェーホフの短編作品を読み始める足掛かりにするのもいいのではないかと思う。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク