『二都物語』 チャールズ・ディケンズ(新潮文庫)

二都物語 (上巻) (新潮文庫)二都物語 (上巻) (新潮文庫)
(1967/02/01)
ディケンズ

商品詳細を見る
二都物語 (下巻) (新潮文庫)二都物語 (下巻) (新潮文庫)
(1967/02/14)
ディケンズ

商品詳細を見る

書名:二都物語
著者:チャールズ・ディケンズ
訳者:中野 好夫
出版社:新潮社
ページ数:338(上)、357(下)

おすすめ度:★★★★




パリとロンドンという、ヨーロッパを代表する二大都市を舞台にした小説が、この『二都物語』である。
フランス革命期のパリも舞台になるが、フランス革命という人類史に残る一大事件に対する言及はあくまで付随的なものでしかなく、歴史小説という呼称はふさわしくないだろう。
あくまで後期ディケンズらしい人間ドラマがメインの作品で、特にそのエンディングは感動的で、一度読めば長く読者の記憶に焼き付けられるように思う。

『二都物語』には犠牲的精神に富んだ人物が多く登場し、私には彼らの見せる誠意の美しさがとても心地よく感じられたのだが、その同じ精神の表れを行き過ぎたものとみなす読者には、『二都物語』がわざとらしい筋運びの駄作ととらえられるかもしれない。
ディケンズお得意の裁判のシーンがあったり、シェイクスピアの『ハムレット』を髣髴とさせる場面があったりと、記憶に残る場面はいくつかあるが、最大の読みどころはやはりその結末部分だろう。
たいていの作品の終幕をめでたしめでたしのエピローグ的な描写に当ててきたディケンズが、『二都物語』では一風変わったかたちで作品を閉じている。
ぜひ最後まで気を抜かず、というよりむしろ終幕が近付くに従ってより力を入れて、読み通してみてほしい。

中野好夫氏の解説は、訳者の解説にしては珍しく『二都物語』の負の面に焦点を当てている。
作品のいいところを誇張気味に述べ立てるのが訳書における解説の常道であるだけに、その中立的な立場の良し悪しは別問題としても、ここまで批判的な解説は後にも先にも読んだことがないというほどだ。
『二都物語』に満足できなかった人にはなるほどと思える記述が多いだろうが、作品の余韻に浸りたい読者は水を差されたような気持ちになるかもしれない。

この『二都物語』、おそらくはディケンズの作品の中では最も毀誉褒貶の甚だしいものの一つだろう。
確かにいくらか難点はあるし、ディケンズ最高傑作との呼び声の高い『デイヴィッド・コパフィールド』と比べれば、ディケンズの長所である人物描写にもやや劣る点があるのは否めない。
しかし、それでいて全世界で読み継がれているのがこの『二都物語』なのであり、この小説には読む人の胸を打つ力がある。
少々の欠点が気にならない人、頭より心で読む人、そんな人たちにお勧めしたい作品だ。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク