『マラーナの女たち』 バルザック(水声社)

マラーナの女たち (バルザック愛の葛藤・夢魔小説選集)マラーナの女たち (バルザック愛の葛藤・夢魔小説選集)

書名:マラーナの女たち (バルザック愛の葛藤・夢魔小説選集)
著者:オノレ・ド・バルザック
訳者:私市保彦、加藤尚宏、大下祥枝、奥田恭士、東辰之介
出版社:水声社
ページ数:394

おすすめ度:★★★★




バルザック愛の葛藤・夢魔小説選集の第三巻がこの『マラーナの女たち』だ。
収録作品は『オノリーヌ』、『シャベール大佐』、『フィルミアーニ夫人』、『徴募兵』、そして『マラーナの女たち』の五編となっている。
オノリーヌ』と『シャベール大佐』は文庫本として既訳で、『フィルミアーニ夫人』も光文社古典新訳文庫の『グランド・ブルテーシュ奇譚』に『マダム・フィルミアーニ』として訳出されており、過去に出版された文庫本と重複している作品は多いが、『マラーナの女たち』と『徴募兵』はあまり目にする機会のなかった作品となる。

『マラーナの女たち』は、ナポレオン軍の侵攻したスペインはタラゴーナの町を舞台としている。
代々続く遊女の家系に生まれた一人娘が、貞淑な娘として育つようにと親元から離されて箱入り娘として暮らしていたが、そんな彼女に、不誠実で美男なことこの上ないイタリア人士官が目を付けたものだから・・・。
バルザックが『マラーナの女たち』を「人間喜劇」の哲学的研究に分類していることからも推測できるように、登場人物の振る舞いの特異さに焦点の当てられている作品とみなすことができるだろうか。
結末部分が駆け足で、少々あっけなく物語が締めくくられるのが欠点と言えるかもしれない。

20ページそこそこの短い作品であるにもかかわらず、一つの衝撃的なドラマを巧みに描ききった『徴募兵』も面白い作品だ。
いかにもバルザックらしく、親子の強い愛情と、革命期における王党派貴族の危うい世渡りが絡まり合って、独特の緊張感を作り出している。

『マラーナの女たち』の収録作品は、いずれも見事なまとまりをもった粒揃いである。
既訳はあれども品薄状態である傑作『シャベール大佐』を読むのにも最適であるし、「人間喜劇」のファンを裏切らない一冊と言えると思う。
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