『子どもたち・曠野』 チェーホフ(岩波文庫)

子どもたち・曠野 他十篇 (岩波文庫)子どもたち・曠野 他十篇 (岩波文庫)

書名:子どもたち・曠野 他十篇
著者:アントン・チェーホフ
訳者:松下 裕
出版社:岩波書店
ページ数:394

おすすめ度:★★★★




表題作の他、『いたずら』、『聖夜』、『ワーニカ』、『実は彼女だった!』、『ヴェーロチカ』、『家庭で』、『幸福』、『賭け』、『ロスチャイルドのヴァイオリン』、『学生』といったチェーホフ初期の頃の作品を集めたのが本書『子どもたち・曠野 他十篇』である。
子どもから年寄りまで、また、貧しい農民から富豪まで描くというチェーホフの特徴が、この一冊からだけでも十分に窺い知れるという収録作品の選択になっている。

本書の中で、『いたずら』、『ワーニカ』、『ロスチャイルドのヴァイオリン』は、他の短編集にも収められることの多い、比較的よく知られた短編作品である。
個人的には、無邪気な子どもたちの暮らしの中の一コマを抜き取ったかのような『子どもたち』、初々しい恋愛感情を描き出す『ヴェーロチカ』、銀行家が行った深刻極まりない15年越しの賭けの結末を語る『賭け』なども、それらに劣らない作品であるように感じている。

本書の中心的な作品と言えば、やはり200ページにも及ぶ中編作品である『曠野』であろう。
親元を離れて学校に通うことになっている少年が、学校のある町に向かって、幌馬車に揺られながら伯父や貧しい農民たちと曠野を旅することになった。
心細くてたまらない間にも、新鮮な印象が次から次へと飛び込んできて・・・。
子どもを描く際のチェーホフの優しさに触れれば、読者もまた優しい気持ちになれることだろう。
その反面、チェーホフならではの淡々とした書きぶりをいささか退屈に感じる読者もいるかもしれず、必ずしも万人受けはしない作品なのかもしれない。

チェーホフの作家人生において、『曠野』は一つのマイルストーンとなる作品としても有名なので、チェーホフに強い関心を抱く読者であればぜひ読んでおくべき作品であると言える。
他の短編集と重複している作品もそれほど多くはないので、チェーホフの代表作を一通り読み終えた読者が次に読む一冊として、本書『子どもたち・曠野 他十篇』をお勧めしたいと思う。
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