『チェーホフ・ユモレスカ 傑作短編集』 チェーホフ(新潮文庫)

チェーホフ・ユモレスカ―傑作短編集〈1〉 (新潮文庫)チェーホフ・ユモレスカ―傑作短編集〈1〉 (新潮文庫)チェーホフ・ユモレスカ―傑作短編集〈2〉 (新潮文庫)チェーホフ・ユモレスカ―傑作短編集〈2〉 (新潮文庫)

書名:チェーホフ・ユモレスカ―傑作短編集
著者:アントン・チェーホフ
訳者:松下 裕
出版社:新潮社
ページ数:389(一)、384(二)

おすすめ度:★★★★




チェーホフ初期のユモレスカと呼ばれる小品の中から、優れた作品を集めたのがこの『チェーホフ・ユモレスカ 傑作短編集』だ。
短編集Ⅰには65編収録、短編集Ⅱには49編収録という具合に、収録作品の数は非常に豊富である。
当然ながら、内容は容易なものばかりなので、電車の中など、ちょっとした時間のできたときの読み物としても向いているように思う。

チェーホフ・ユモレスカが取り扱う主題はきわめて広範に及んでいる。
『チェーホフ・ユモレスカ』の収録作品の傾向性を述べるとすれば、結婚生活をテーマにするもの、官僚社会を諷したもの、劇場を舞台にするもの、そして医者の出てくるものなどが比較的多く、本格的な作家として始動する以前のユモレスカにおいても、作家としてのチェーホフの特徴がよく表れている、とは言えそうである。
チェーホフ・ユモレスカチェーホフ・ユモレスカチェーホフ・ユモレスカ〈2〉チェーホフ・ユモレスカ〈2〉チェーホフ・ユモレスカ〈3〉チェーホフ・ユモレスカ〈3〉

新潮文庫入りを果たす前に、『チェーホフ・ユモレスカ』は同じく新潮社から単行本が全三冊で刊行されていた。
第一巻と第二巻は、文庫版の傑作短編集とほぼ同じ内容で、収録作品の相違はせいぜい1、2編に過ぎないので、どちらか一方で読めばそれで十分だろう。
第三巻は、中公文庫の『郊外の一日』と収録作品が同じであるため、単行本で出された『チェーホフ・ユモレスカ』は実質的にはすべて文庫化されていると言える。

チェーホフのユモレスカは、あくまで文学的な価値を高めていった後期チェーホフありきの、習作的な位置付けに過ぎない若書きの作品群であると言われれば、それは否定できないだろう。
しかしながら、わずか5ページの小品においても若きチェーホフの才能は発揮されており、最小限の文言で最大限の情景が描き出されていて、読者を楽しませてくれる。
文学史に名を残す作品ではないかもしれないが、読んで面白い「習作」であれば、それはそれで読む価値があると言えるのではなかろうか。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク