『大いなる遺産』 チャールズ・ディケンズ(新潮文庫)

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(1951/10)
ディケンズ

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(1951/10)
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書名:大いなる遺産
著者:チャールズ・ディケンズ
訳者:山西 英一
出版社:新潮社
ページ数:430(上)、450(下)

おすすめ度:★★★★




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イーサン・ホーク、グウィネス・パルトロウ 他

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後期ディケンズの代表作として知られる『大いなる遺産』。
右はイーサン・ホーク、グウィネス・パルトロウに加えてロバート・デ・ニーロという豪華キャストで製作された映画『大いなる遺産』だ。
原作であるディケンズの『大いなる遺産』にあまり忠実ではなく、現代アメリカを舞台にしている翻案とでもいった作品なので、ディケンズを意識しながら楽しむのは難しいと思われるが、映画自体はよくできているほうだろう。

『大いなる遺産』は、ピップという愛称で親しまれている孤児に、とある人物が膨大な遺産、すなわち「大いなる遺産」を相続させるつもりであるとわかり、貧しかったピップの運命が大きく変化していくというのが主なあらすじだ。
財産が転がり込むという見込みによって当人はもちろん、周りの人間の振る舞いにまで影響が及ぼされる様は、少々滑稽であると同時に、印籠を見せつけた際の水戸黄門のような痛快ささえも感じられて面白い。
ディケンズ自身が貧しい身から超人気作家へという転変を経験しているわけだから、ディケンズも似たようなことを体験していたのかもしれないと思うと、作品がいっそう興味深くなってくるはずだ。

私のお気に入りは、ピップの義兄である鍛冶屋のジョーだ。
感情表現が決して上手なほうではないのだが、彼の不器用な言動には微笑ましい点が多く、非常に好感が持てる。
バーナビー・ラッジ』にも同様に職人気質の好人物が登場するし、まじめに働く労働者に対するディケンズの好意的なまなざしの表れと考えてもいいのかもしれないが、いずれにせよ、読者は不器用なジョーを応援せずにはいられないはずだ。

脱獄囚や陰惨な館、薄暗い部屋や暗闇の描写などが多く、それらが巧みに謎めいた雰囲気をかもし出しているが、それだけに小説世界全体があまり明るい調子ではなくなっていて、『オリヴァ・ツウィスト』や『デイヴィッド・コパフィールド』の楽天的なディケンズ・ワールドに親しんだ読者には、ひょっとすると期待外れだと感じられるかもしれない。
そうはいっても、ストーリーの面白さは言うまでもなく、さすがにディケンズ円熟期の作だけあって多くの伏線が仕込まれていたりと、作品としての完成度は高いように思うので、ぜひ一人でも多くの読者にディケンズが人類に遺した財産の恩恵にあずかっていただきたい。
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