『メルヒェン』 ヘルマン・ヘッセ(新潮文庫)

メルヒェン (新潮文庫)メルヒェン (新潮文庫)

書名:メルヒェン
著者:ヘルマン・ヘッセ
訳者:高橋 健二
出版社:新潮社
ページ数:199

おすすめ度:★★★☆☆




ヘッセの創作した童話を集めたのが本書『メルヒェン』である。
童話を集めているとは言っても、収録作品の全部が全部、子供でも楽しめるいわゆるメルヘンチックな作品かというとそうでもなく、中には少々堅苦しい内容のものもあるので、あまり軽い気持ちで手にすると期待外れとなるかもしれない。

本書には、『アウグスツス』、『詩人』、『笛の夢』、『別な星の奇妙なたより』、『苦しい道』、『夢から夢へ』、『ファルドゥム』、『アヤメ』の八作品が収録されている。
いずれも10ページから30ページ程度の作品となっており、メルヘンの要素の一つである幻想性に富んだものが多いが、その反面、寓意が不鮮明な『苦しい道』や、シュールレアリスム的な『夢から夢へ』の場合は、今日の日本人の一般的な感覚に従えば、「メルヘン」であると判断するのはさすがに少し無理があるような気もする。

しかし、『メルヒェン』の収録作品にヘッセらしさが表れていることは否定のしようもない。
ヘッセ文学にとってのキーワードとも言うべき、旅や漂泊が頻繁に取り上げられていることは注目に値するだろう。
また、中国を舞台とした『詩人』からは、ヘッセを特徴付ける東洋志向が窺えると言える。
本書の収録作品には、第一次大戦中に執筆されたものが少なくないようで、しばしばヘッセの暗澹たる内面が浮き彫りにされてしまっているのも、ヘッセらしいと言えばヘッセらしいことである。

本書の収録作品から、ヘッセの築いた文学作品の総体を予想することは不可能だが、ワイルドやトルストイもそうであったように、童話や民話というジャンルの作品を残したということ自体は、少なくともヘッセという作家を構成している一つのエッセンスになっていると言えるのではなかろうか。
安価な文庫本での入手も可能なことだし、ヘッセに関心を抱く方であれば手にする価値のある一冊だと思う。
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