『庭仕事の愉しみ』 ヘルマン・ヘッセ(草思社文庫)

文庫 庭仕事の愉しみ (草思社文庫)文庫 庭仕事の愉しみ (草思社文庫)

書名:庭仕事の愉しみ
著者:ヘルマン・ヘッセ
訳者:岡田 朝雄
出版社:草思社
ページ数:382

おすすめ度:★★★★




庭にまつわるヘッセの詩やエッセイ、さらには小説から手紙に至るまでを集めたのが本書『庭仕事の愉しみ』である。
都会から離れた田舎での暮らしを好み、非常に多くの時間を庭いじりに割いていたヘッセは、玄人と呼んでもよいほどの熱心な園芸家でもあった。
『庭仕事の愉しみ』は、そんなヘッセの自分の庭に対する強い思い入れが如実に見て取れる本となっている。

本書に収められているたいていの作品は10ページ未満の小品であるが、例外的に、叙事詩『庭でのひととき』、小説断片『夢の家』と童話『イーリス』は、いずれも30ページ以上あり、これらの作品は質的に見ても本書の中心的存在と言えるだろう。
このうち、童話の『イーリス』は、新潮文庫の『メルヒェン』にも『アヤメ』というタイトルで収録されていて、ヘッセの童話作品の中では代表的なものに数えられるようだ。
また、未完の小説の断片に過ぎないとはいえ、『夢の家』からはヘッセの自伝的要素が随所に透けて見えるようで、読者は非常に興味深いと感じるのではなかろうか。

本書には、ヘッセの写真だけではなく、ヘッセの描いた水彩画も数点、カラーで収められており、我々の目を楽しませてくれる。
ヘッセの詩と、ヘッセ自身によって描かれて詩に添えられた絵を同時に見ることができるというのは、ヘッセに興味ある人にはやはりうれしいものである。

『庭仕事の愉しみ』のようにテーマが限定的な詩文集は、実際に庭いじりをしている方のほうがより一層の共感を持って読み進めることができるはずだが、『庭仕事の愉しみ』の場合は、必ずしも庭仕事に愉しみを見出していない方でも面白いと感じることのできる内容になっていると思う。
むしろ、自らの庭を持つことのできない都会暮らしの人にこそ、お勧めすべき本なのかもしれない。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク