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『サハリン島』 チェーホフ(中央公論新社)

サハリン島サハリン島

書名:サハリン島
著者:アントン・チェーホフ
訳者:原卓也
出版社:中央公論新社
ページ数:422

おすすめ度:★★★★




チェーホフの短編小説でも戯曲でもなく、旅行記となるのが本書『サハリン島』である。
当時のサハリンはロシア帝国にとっての流刑地であり、旅行者が訪れるような場所とはかけ離れた存在であって、旅行記というよりはルポルタージュと呼ぶ方がふさわしい内容になっている。

チェーホフは、シベリアから海峡を渡ってサハリン北部へ、その後サハリンの南部へと、流刑地としての実情を詳細に調査しながら旅を続ける。
サハリンの厳しい気候、囚人管理や植民地経営のずさんさなどが活写されていて、『サハリン島』の出版をきっかけにロシアでサハリン島の実態が社会問題の一つとして取り上げられるようになったことも頷けるというものだ。
統計データばかりを並べるのではなく、随所に具体的なエピソードなども挟んだ作品となっていて、チェーホフならではの読みやすさも健在である。

『サハリン島』には、サハリンに居住していた民族の一つであるアイヌはもちろん、日本領事などもわずかではあるが登場し、日本人読者を楽しませてくれる。
チェーホフというヨーロッパの一教養人の視点から描かれており、多少のバイアスの存在は否めないものの、日本に関することは概ね好意的に書かれているようで、日本人の読者としてはうれしい限りである。
チェーホフには日本を美化して伝える必要はなかったはずなので、実際にチェーホフの目に映ったとおりの見解が述べられているのだろう。

チェーホフの作家としての最大の転機はサハリン島訪問であると考える研究者が多く、チェーホフを語る上でサハリンでの体験は欠かすことのできないものとなっている。
チェーホフが何を見て、何を感じたことで後期チェーホフが生まれたのかを考えてみるというのも、チェーホフのファンには『サハリン島』の面白い読み方になるのではなかろうか。
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