『メルヴィル中短篇集』 メルヴィル(八潮版・アメリカの文学)

メルヴィル中短篇集 (八潮版・アメリカの文学)メルヴィル中短篇集 (八潮版・アメリカの文学)

書名:メルヴィル中短篇集
著者:ハーマン・メルヴィル
訳者: 原 光
出版社:八潮出版社
ページ数:493

おすすめ度:★★★★




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メルヴィルの中篇・短篇小説合わせて16篇を集めたのが本書『メルヴィル中短篇集』である。
バートルビー』、『ベニト・セレノ』、『ビリー・バッド』のように文庫本にもなっている有名どころは当然ながら、メルヴィルの中短篇作品のほとんどを本書が網羅しているので、メルヴィルに興味のある方には必読の一冊と言えるのではなかろうか。
八潮出版社から出されている原氏の他の訳書と同様、この『メルヴィル中短篇集』もなぜか仮名遣いが少々古いものとなっているが、慣れればどうということはないし、若い方でも読んでいられないというほどではないと思う。

本書には、上記の作品の他に、ガラパゴス諸島を舞台としたエッセイ風の『魔法群島』、落ちぶれた資産家の末路を哀愁深く描いた『ジミー・ローズ』、塔や煙突などへの偏執といってもよいほどの執着心を取り扱う『鐘塔』や『わたしとわが煙突』などが収録されている。
個人的なお勧めは、屋根裏部屋で見つけたテーブルから夜な夜な奇怪な音が聞こえてくるという『林檎の木の卓』で、オカルト風のテーマに理性的に挑むという切り口が、どことなくポーを思い出させるような作品だ。

また、『二つの聖堂』、『貧者のプディングと富者の食べ残し』、『独身者の楽園と処女の地獄』の3篇は、イギリスとアメリカを舞台とする対照的な二部構成という、一種のシリーズものとでもいえようか。
いずれも一般的なメルヴィルのイメージを覆すかもしれない軽いタッチの作品で、センチメンタルな作風に仕上がっているのが妙に新鮮に感じられるのは私だけではないだろう。

メルヴィルの作品といえば、回りくどい描写によって物語が遅々として進まないところが短所であり、それが同時に独特の読み応えを生み出す長所でもあるのだが、短篇作品となるとさすがにそうもしていられないからか、物語の展開はそこそこ早いものがほとんどだ。
短篇小説が注目されることの少ないメルヴィルではあるが、メルヴィルの新たな一面の垣間見を楽しみたい方にはお勧めの一冊だと言える。
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