『O侯爵夫人 他六篇』 クライスト(岩波文庫)

O侯爵夫人 他六篇 (岩波文庫 赤 416-4)O侯爵夫人 他六篇 (岩波文庫 赤 416-4)

書名:O侯爵夫人 他六篇
著者:ハインリヒ・フォン・クライスト
訳者:相良 守峯
出版社:岩波書店
ページ数:259

おすすめ度:★★★☆☆




岩波文庫から出されているクライストの短篇集が本書『O侯爵夫人 他六篇』である。
表題作である『O侯爵夫人』を除けば、河出文庫から出されたクライストの短篇集である『チリの地震―クライスト短篇集』と収録作品が完全に重複しているため、訳の新しいそちらをお勧めすべきかもしれないが、クライストに関心のある方が『O侯爵夫人』を読まずにいるのは少し惜しい気がする。

『O侯爵夫人』はその書き出しが鮮烈で印象深い。
とあるイタリアの町で、貞淑な未亡人として知られるO侯爵夫人が、「私は身に覚えがなく妊娠しているようなので、心当たりのある殿方は名乗り出てほしい」という趣旨の新聞広告を出すというのだから、なかなか珍妙な話である。
その殿方が誰なのか、読者は容易に確信できるので、登場人物たちと一緒に謎解きを楽しむというわけにはいかないが、それでも尋常ならざる状況に置かれたO侯爵夫人一家の描写は、読む者の興味を引き付けてやまないことだろう。
世界の文学〈5〉シラー.クライスト―新集 (1972年)世界の文学〈5〉シラー.クライスト―新集 (1972年)

『O侯爵夫人』を読むには、右の文学全集もお勧めである。
これには『こわれがめ』も『ミヒャエル・コールハースの運命』も訳出されていて、クライストの有名どころがこの一冊で網羅できてしまうだけではなく、『ヴィルヘルム・テル』や『たくみと恋』といったシラーの戯曲も収められているという充実ぶりだ。
それにしても、この類の文学全集の出版が下火になってしまったことが残念でならないのは、私だけではないだろう。

収録作品がほぼ重複している河出文庫の『チリの地震』がある中で、あえて岩波文庫の『O侯爵夫人』を手にしようとする人はかなり限られてしまうのではなかろうか。
しかし、『O侯爵夫人』はそんな少々マニアックな方の期待を裏切らないはずの作品だと思う。
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