『生きる歓び』 エミール・ゾラ(論創社)

生きる歓び (ルーゴン=マッカール叢書)生きる歓び (ルーゴン=マッカール叢書)

書名:生きる歓び
著者:エミール・ゾラ
訳者:小田光雄
出版社:論創社
ページ数:424

おすすめ度:★★★★




ルーゴン・マッカール叢書の第十二巻に当たるのが本書『生きる歓び』である。
叢書中の内容的なつながりでいうと第三巻の『パリの胃袋』に続く作品ということにはなるが、単独で読んでも特に支障はないと思えるほどに相互の連関は薄く、それぞれ独立した鑑賞が可能になっていると言えるだろう。

『生きる歓び』の舞台は、人里離れた海沿いの小村である。
一族にまつわる遺伝的要素を受け継ぎつつも、純真さと慈悲の心を持つ孤児ポリーヌが、親戚の家に引き取られる。
豊富な遺産を抱えてやってきた娘に、新しくできた家族の面々も最初は誠実さに満ちた親切を尽くしていたのだが・・・。
舞台は終始同じで閉鎖的であり、登場人物も多くはないため、『生きる歓び』からはわかりやすい構成で淡々と続いていく物語という印象を受けるかもしれない。
確かに全般にこれといった派手さはないが、それでも各章のドラマは読者を楽しませるに足るものとなっているから不思議なものだ。

ゾラにしてはポジティブさを感じさせるタイトルである『生きる歓び』ではあるが、その内容はいかにもゾラらしく、堕落しきった社会のはみ出し者だけでなく、身内の人間の不親切や身勝手、さらには怠惰や裏切りといった、読者を不愉快にさせるような人間社会の負の側面は随所に盛り込まれている。
『生きる歓び』がゾラの代表作とされることはほぼないとはいえ、作風はゾラらしいものになっていると言えるはずだ。

ルーゴン・マッカールの家系図におけるポリーヌの位置付けから判断しても、正直なところ『生きる歓び』を叢書中の重要な著作とみなすことは少々難しいが、作品の完成度にはさすがゾラと感じさせるだけのものがある。
夢想』とともに、叢書中の異色の一冊としてゾラのファンにお勧めしたいと思う。
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