『兵士の報酬』 フォークナー (文遊社)

兵士の報酬兵士の報酬

書名:兵士の報酬
著者:ウィリアム・フォークナー
訳者:加島祥造
出版社:文遊社
ページ数:484

おすすめ度:★★★★




フォークナーの処女作となるのがこの『兵士の報酬』である。
フォークナーもいわゆるロスト・ジェネレーションの作家の一人と評されることが多いが、『響きと怒り』や『アブサロム、アブサロム!』といった代表作を読んでいる限り、その肩書があまりしっくりこないと感じる読者が多いかもしれない。
その点、戦争を経た若者たちを主な登場人物とするこの『兵士の報酬』を読めば、以後その違和感は消えてなくなるに違いない。

『兵士の報酬』は、第一次世界大戦後の帰還兵の物語である。
死んだと思われていた青年マーンがアメリカの郷里に帰ってくるのだが、顔に大怪我を負っているだけでなく、記憶まで喪失して帰ってきたものだから・・・。
一般にフォークナーと聞けば想像されるような南部ものと比べると、『兵士の報酬』で描かれている作品世界はけっこう異なるものとなっている。
そうはいっても、未熟な青年、粗暴な男、浮薄な娘、大胆な女性など、いかにもフォークナーが描きそうな人物像には事欠かない作品と言えると思う。

フォークナーといえば難解な作家としても知られているが、『兵士の報酬』から難解という印象を受ける読者は少ないはずだ。
一文が短い上に、会話部分も多いので非常に読みやすく、フォークナーらしい重厚な文体による読み応えある作品を期待すると、かえって裏切られるかもしれない。

フォークナーの創り上げた作品群を思い浮かべると、『兵士の報酬』を彼の典型的な作品の一つとみなすことはできなさそうだが、この小説がフォークナーの作家としての出発点となったという事実は案外うなずける気がする。
フォークナーに興味のある方にはお勧めできる一冊だ。
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