『わたしは誰でもない―エミリ・ディキンソン詩集』 ディキンソン(風媒社)

わたしは誰でもない―エミリ・ディキンソン詩集わたしは誰でもない―エミリ・ディキンソン詩集

書名:わたしは誰でもない―エミリ・ディキンソン詩集
著者:エミリー・ディキンソン
訳者:川名澄
出版社:風媒社
ページ数:144

おすすめ度:★★★★




ディキンソンの残した作品の中から、短いものばかり約60篇を集めたのが本書『わたしは誰でもない』である。
ディキンソンの詩は、そもそもが短いめのものではあるが、本書の収録作品は最長でも8行までと、特に短い小品ばかりが選ばれている。
おそらくはそのおかげで、それぞれの詩の制作年代はまちまちであるものの、詩集としては非常に統一感のある仕上がりになっている。

『わたしは誰でもない』には、愛、神、自然といったいかにもディキンソンらしいテーマに沿った詩が多く収められているので、ディキンソンの作品を好きな方ばかりでなく、ディキンソンがどういう詩人なのかをあまり知らない方が初めて読むにも適しているように思う。
孤独を愛する一人の女性の胸のうちからあふれ出る言葉の数々を読んでいるうちに、読んでいるこちらの胸まで優しい気持ちでいっぱいになってくるが、この感覚こそが、ディキンソンの詩が時代を越えて愛される理由の一つなのではなかろうか。

本書の構成は、右ページに原詩、左ページに訳文という、対訳形式となっている。
ディキンソンの原詩に触れることで、語数の少なさゆえにとっつきやすそうに感じられる反面、その解釈が意外と難しいことがわかるのではないかと思う。
率直なところを言えば、本書を読みながら、訳文がもう少しこなれたものであるといいと感じたことが何度かあったが、ストーリー性に乏しいディキンソンの短詩をうまく訳すのは、なかなか至難の業なのかもしれない。

ディキンソンの書くような内向的な詩は、一度読んだだけでは味わいつくせないのが普通だと思う。
文章量が少ないからといって、数時間のうちに一気に読み通して、それで終わりにしてしまうのももったいないと思う。
一人静かな黄昏時にでも、ゆっくりと味読されることをお勧めしたい。
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