『ドンビー父子』 ディケンズ(こびあん書房)

ドンビー父子 (上)ドンビー父子 (上)ドンビー父子 (下)ドンビー父子 (下)

書名:ドンビー父子
著者:チャールズ・ディケンズ
訳者:田辺 洋子
出版社:こびあん書房
ページ数:550(上)、509(下)

おすすめ度:★★★★




ディケンズ中期の長編小説の一つがこの『ドンビー父子』である。
あまり代表的な作品とみなされることはないし、翻訳も乏しいのが実情ではあるが、身体面や性格面がやや大袈裟に戯画化された登場人物に満ちていて、非常にディケンズらしい作品と言えると思う。

ロンドンのシティに傲然と構えるドンビー商会の社主であり、横柄この上ないドンビー氏の気掛かりといえば、跡継ぎがいないことだった。
しかし、そんな彼に待望の息子が生まれ、店の名を「ドンビー父子商会」に変える見込みができたのだが・・・。
優しい心を持ちながらもドンビー氏にまるで構ってもらえない娘のフローレンス、社長にへつらい続けながらも下心が透けて見える支配人のカーカー、誠実で活気ある少年のウォルター、お人好しで単純そのものである船長のカトル。
ディケンズの作品を既にいくつか読んでいる読者であれば、初対面とは思えないいささか類型的な登場人物に数多く出会えることだろう。

『ドンビー父子』にも、ユーモアとペーソスというディケンズの二大特徴は顕著に表れている。
確固たる構成の有無ということで言えば、『マーティン・チャズルウィット』と同様、過渡期にあたる作品と言えるだろう。
ストーリー展開はというと、ある程度は先が予想できるわかりやすいものであるのは事実だが、それにもかかわらずすらすらと楽しく読めてしまうのだから、やはり小説家としてのディケンズの手腕には恐れ入るというものだ。

決して安価ではないし、文章量も多いので、なかなか気軽には手が出せない作品かもしれない。
そうはいっても、『ドンビー父子』がディケンズのファンならば必ずや楽しめる作品であることは間違いないので、興味のある方は躊躇せずに手を出してみてほしいと思う。
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