『熊』 フォークナー (岩波文庫)

熊 他三篇 (岩波文庫)熊 他三篇 (岩波文庫)

書名:
著者:ウィリアム・フォークナー
訳者:加島 祥造
出版社:岩波書店
ページ数:271

おすすめ度:★★★★




フォークナー後期の作品を四編収録した中短篇集が本書『熊』である。
難解な作家として知られるフォークナーにしては読みやすい作品であり、文庫本という手頃さもあるので、フォークナーに関心のある方にはお勧めできる一冊だ。

本書には、『熊』、『むかしの人々』、『熊狩』、『朝の追跡』の四篇が収録されていて、いずれも森での狩りをテーマにしたものだ。
止まらなくなったしゃっくりを巡る滑稽話である『むかしの人々』を除けば、狩りの経験が乏しい少年の視点を通じて語られている物語ばかりなので、実際に熊や鹿を追ったことのない読者にとっても、狩猟における鮮烈な印象や興奮を少年と共有することができるように思う。
それらの話の中に精神性が盛り込まれていて、単純にスリリングな狩猟物語ではなくなっているあたりに、フォークナーたる所以を見て取ることもできるはずだ。

本書は元々一つの作品集からの選集になっているので、登場人物が重複していたり、祖先や子孫が登場したり、別の作品内のエピソードへの言及があったりと、それぞれの作品が有機的なつながりを持っていて、一つの長編作品にでも組み立てられそうなストーリーになっている。
『熊』を読んでいるうちに、フォークナーの描く縦方向にも横方向にも伸びているような作品世界を読者は奥深く理解できたような錯覚に陥りかねないが、それこそまさに、フォークナーの術中にはまるというものなのだろう。

フォークナーという作家は本当に色々な顔を持っているものだから、『熊』の作者が『響きと怒り』や『サンクチュアリ』、『寓話』といった作品をも書いたとはにわかには信じ難いほどである。
しかし、森に象徴されている自然と一体になって暮らす狩人の精神をも描き出していたという一面は、見過ごすには惜しい一面であると思うので、フォークナーに興味のある方はぜひ本書を手にしていただければと思う。
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