『ビュグ=ジャルガルの闘い』 ユーゴー(潮出版社)

ビュグ=ジャルガルの闘い (1982年)ビュグ=ジャルガルの闘い (1982年)

書名:ビュグ=ジャルガルの闘い
著者:ヴィクトル・ユーゴー
訳者: 辻 昶、野内 良三
出版社:潮出版社
ページ数:272

おすすめ度:★★★☆☆




ユーゴー初期の長編小説の一つがこの『ビュグ=ジャルガルの闘い』である。
後に大幅に書き直されたという経緯があるとはいえ、処女作とも言えるほどに初期の作品であり、それなりの粗さというか、緻密さに欠けるところがあるにはあるが、ユーゴーらしい作品になっていることは疑いを入れないように思う。

『ビュグ=ジャルガルの闘い』は、戦闘となれば比類なく勇敢でいながら平時には至って物憂げな様子をしているとある大尉が、カリブ海のフランス植民地であったハイチにおける黒人奴隷の反乱を思い出話として語るという、回想風のスタイルだ。
黒人奴隷の身でありながら、高慢とも言えるほどの毅然とした態度を崩さないピエロに対して、大尉は生意気だという反感だけではなく尊敬の念すら抱き始めるが、奴隷たちを虐げ続けていた植民地には不穏な空気が漂い始めていて・・・。

作品の中頃でストーリーが少し停滞しているように感じられる箇所があるとはいえ、『ビュグ=ジャルガルの闘い』はあくまでスリリングかつスピーディーな展開が基調となっており、一度読み始めれば読者を引き付けて離さないのではないかと思われる。
レ・ミゼラブル』や『エルナニ』を思い出させるような、人間としての誠実さも描かれていて、初期作品にもそういったユーゴーの特徴が表れていることを知れば、読者はそれこそがユーゴーの生涯のテーマであったということを実感できるのではなかろうか。

ユーゴーの小説のあら捜しをしようとすれば欠点は見出せるかもしれないが、何はともあれ、ストーリー性に富んでいて面白いものであることは間違いない。
日本に意外と研究者が乏しいのか、出版界の事情なのかは知らないが、多くの小説作品を残したユーゴーはもっと翻訳紹介されてしかるべき作家の一人であろう。
非常にレアな本となってしまっているのが残念ではあるが、可能であれば『ビュグ=ジャルガルの闘い』を手にしていただければと思う。
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