『アンティゴネ』 ブレヒト(光文社古典新訳文庫)

アンティゴネ (光文社古典新訳文庫)アンティゴネ (光文社古典新訳文庫)

書名:アンティゴネ
著者:ベルトルト・ブレヒト
訳者:谷川 道子
出版社:光文社
ページ数:186

おすすめ度:★★★★




ブレヒトの『アンティゴネ』は、ソポクレスによるギリシア悲劇の改作という、ブレヒトとしては異色の作品となっている。
ブレヒトが亡命中であった第二次世界大戦後に書かれた作品で、『アンティゴネ』もまた、戦時下における市民のあり方を問うている作品として読むことも可能だろう。

テーバイの国王であり、叔父でもあるクレオンによって、血を分けた兄弟の埋葬を禁じられたアンティゴネ。
肉親の遺骸が動物に食い荒らされていくことに耐え切れず、法に背いて埋葬することを決心をするのだが・・・。
人としての倫理と国の法律との不一致という葛藤に接したアンティゴネが人道を選ぶことは、特に本書のように法が恣意的なものである場合においては、大半の読者の賛同を得られることであろう。

光文社の古典新訳文庫ではけっこうありがちなことではあるが、本書『アンティゴネ』においても、全ページにおける本文の比率が低い。
裏を返せば、訳者による解説やあとがきが非常に充実しているということではあるのだが、約200ページのうち三分の一以上が解説、年譜、あとがきで占められるというのでは、本文の少なさに少しがっかりしてしまう読者がいても仕方ないのではなかろうか。
解説なしでも自立して十分面白い作品なのだから、もっと薄く、そして安くしてくれたほうがお手頃でありがたいと考えるのは私だけだろうか。

社会派作家のブレヒトのことだから、『アンティゴネ』に込められた思想的主張はなんだろうかと、読者はつい勘ぐってしまうかもしれない。
オリジナルであるソポクレスの『アンティゴネ』との相違点も気になるところではある。
しかし、個人的には、『アンティゴネ』はあまり深いことを考えずに純粋にストーリー展開を楽しめる戯曲になっているので、研究者目線でなく、鑑賞者目線で接してみてもよいのではないかと思う。
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