『暦物語』 ブレヒト(光文社古典新訳文庫)

暦物語 (古典新訳文庫)暦物語 (古典新訳文庫)

書名:暦物語
著者:ベルトルト・ブレヒト
訳者: 丘沢 静也
出版社:光文社
ページ数:312

おすすめ度:★★★★




劇作家として知られるブレヒトの、短編小説と詩作品の計17編を収録しているのがこの『暦物語』である。
短編小説と詩が交互に収録されていて、簡潔で読みやすい文章を書く散文家として、また美しい詩を書く詩人としてのブレヒトを垣間見ることができる一冊だ。
子供の十字軍子供の十字軍

『暦物語』の中でよく知られている作品といえば、『アウクスブルクの白墨の輪』であろう。
この作品にストーリーの斬新さを期待することはできないかもしれないが、結構の整ったよくできた一編であるということは賛同いただけるものと思う。
詩作品の中で言えば、『子どもの十字軍 1939年』が最も有名なのではなかろうか。
右に挙げるように、かつて銅版画の挿絵入りの単行本にもなっているほどで、切なく感動的なストーリーに、誰もが胸を打たれるに違いない。

『暦物語』の収録作品の中では、個人的には『カエサルとカエサルの軍団兵』と『怪我をしたソクラテス』をお勧めしたい。
前者は、暗殺を目前に控えたカエサルをテーマとする歴史小説風の小品で、結末は誰の目にも明らかなのに、それでも面白く読めてしまうのだから不思議なものだ。
後者も歴史ものといえば歴史ものかもしれないが、話のスケールなどの面で少し毛色が異なっている。
ソクラテスが戦争で武勲を立てたと称賛される一方で、戦場での事実を知るのは本人ばかりというややコミカルなタッチの作品となっており、こちらもやはり面白い。

ブレヒトは、日本で十分に紹介されてきたとは言い難い作家の一人であるように思う。
そんな中で、『暦物語』のようなブレヒトの劇作品以外が文庫化されるというのは、うれしいサプライズであった。
本書を読めば、意外と多角的であるブレヒトを、誰もがもっと知りたいと思うのではなかろうか。
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