『老嬢』 バルザック(水声社)

老嬢 (バルザック愛の葛藤・夢魔小説選集)老嬢 (バルザック愛の葛藤・夢魔小説選集)

書名:老嬢 (バルザック愛の葛藤・夢魔小説選集)
著者:オノレ・ド・バルザック
訳者: 私市 保彦、片桐 祐
出版社:水声社
ページ数:380

おすすめ度:★★★★




水声社の「バルザック愛の葛藤・夢魔小説選集」の第四巻目がこの『老嬢』である。
すべての収録作品が本邦初訳というわけではないにせよ、人間喜劇の中であまり脚光を浴びることのない作品が収録されており、バルザックのファンならば必読の一冊と言えると思う。

本書は『老嬢』の他に、『ボエームの王』、『コルネリュス卿』、『二つの夢』の三編を収録している。
資産家のオールドミスを巡る結婚話である『老嬢』は、まさに「愛の葛藤」というシリーズ名にふさわしい内容の作品となっている。
200ページもある作品の割りに、ドラマ自体の展開は乏しいように感じられるが、それだけ各々の登場人物の描写は徹底しており、非常に彫りの深い人物像が出来上がっていて、いかにもバルザックらしい中編作品であると言える。

『ボエームの王』は岩波文庫の『サラジーヌ』にも収録されている作品で、ボヘミアンたちの「王」に恋した人妻の一途な愛が描かれていて、良きにつけ悪しきにつけ、読者の心に何らかの印象を残さずにはいないはずだ。
『コルネリュス卿』は、15世紀のトゥールを舞台にしていて、物語はゴシック小説風の緊張感の中で進んでいく。
虐げられている若妻と相思相愛の青年、醜く年老いたその夫、そして不吉な噂の付きまとうコルネリュス卿とルイ十一世と、役者は揃っているので、全体の構成は緩いものの、ストーリーを追っていくだけで十分楽しめる作品となっている。
秀逸な作品である『二つの夢』は、解説によるとこれは『カトリーヌ・ド・メディシス』という大作のごく一部に過ぎないらしいが、ロベスピエールやマラーといったインパクトの強い登場人物のおかげで、読者が物足りなさを感じることはないだろうと思う。

バルザック愛の葛藤・夢魔小説選集は、「人間喜劇」を一つでも多く読みたいという読者には大変喜ばしいシリーズだった。
水声社には、今後もぜひ同様な選集を発刊してもらいたいものだ。
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