『バール 夜打つ太鼓 都会のジャングル』 ブレヒト(晶文社)


書名:バール 夜打つ太鼓 都会のジャングル
著者:ベルトルト・ブレヒト
訳者:石黒英男
出版社:晶文社
ページ数:277

おすすめ度:★★★☆☆




ブレヒトの初期の戯曲作品三編を収めたのが本書『バール 夜打つ太鼓 都会のジャングル』である。
ブレヒトの出世作である『夜打つ太鼓』をはじめ、彼が本格的に演劇活動を始めた初期作品三編が揃っているとあり、ブレヒトに興味のある方には格好の一冊となっている。

『バール』は、豊かな詩作の才能に恵まれてはいるが、酒と女に現を抜かして日々を送っているバールという、特異な存在を描いている。
『夜打つ太鼓』は、死んだと思っていた恋人が戦地から帰って来るという、一見すると文学作品にありがちなテーマではあるが、それを第一次大戦末期のドイツという舞台に持ち込むことで、他の類似の作品から差別化されているように思われる。
当時のドイツの政治状況を知らないとわかりにくい作品ではあるものの、個人的には本書の中で一番気に入った作品である。
他方、『都会のジャングル』はというと、登場人物の対立の理由がそれほど鮮明でなく、とらえどころがない作品と言っても過言でないような気がする。
『バール』と同様、現実味が薄い作品なので、読者の共感は得難いのではなかろうか。

本書冒頭には、ブレヒト自身による「初期作品を読みなおして」という序文が付されている。
過去の作品に対するブレヒト自身のコメントは、多少言い訳めいた感じがなくもないけれども、作者が後に書いた序文はやはり興味深いものである。
しかし、収録作品のあらすじに関する言及も含まれているので、ネタばれを避けたい読者は序文を読むのは後回しにしたほうがいいかもしれない。

初期作品の例に漏れず、本書の収録作品にもブレヒト文学のエッセンスが存分に盛り込まれている。
あくまでブレヒトに関心のある方向けであり、万人向けの本ではないのだが、それだけブレヒトファンなら本書を楽しめることだろう。
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